1年に1度の特別な日。それは愛しい者と過ごすからこそ意味をなす。
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「跡部!誕生日おめでとう!」
「サンキューな慈郎」
「にしても、相変わらずけったいなパーティーやなぁ」
「あーん?当たり前だろ」
今日は10月4日。つまりは俺様の華麗なる誕生日だ。
もちろん、毎年恒例でパーティーを開く。招待するのは親の関係者に氷帝の理事、後はテニス部関係だ。
「オイ宍戸!俺のから揚げ取るなよ!」
「はぁ?まだあるじゃねぇかよ」
「俺はそれがいいんだ!」
「やっぱり跡部さんの誕生日は盛大だね」
「お前の家も毎年凄いだろ…」
「こんなに大規模じゃないよ。ね、樺地」
「ウス」
「コラ慈郎、そないな場所で寝たらあかんで」
「A〜…でもスッゴく気持ちいいC〜♪」
……アイツらは呼んで良かったのか、今になって心配になって来たぜ…
「…………」
まだ、来てねぇのか…
「跡部、誰か探しとるん?」
「…なんでもねぇ。少し風に当たる」
「ほんなら嬢ちゃん達の相手は俺が引き受けたるわ」
「俺様はアイツらなんか気にしてねぇよ」
「さよか。ならこれが俺からのプレゼントっちゅーことで」
そして忍足は女共の相手をし始めた。まったく食えねぇ奴だぜ。
ベランダに出ると張り詰めた風が頬を掠めた。
「……静かだな…」
さっきまであんなに賑わっていたのに、今は一人別の空間にいるような感覚さえ覚える。
「早く来いよ…馬鹿…」
だが待てどもアイツの姿はいっこうに見えない。俺様との約束を忘れやがったのか?
ザッ ザッ
「ん?」
30分ぐらいして、下のテラスから足音が聞こえた。
(誰だ…)
月に雲がかかっていて顔が見えねぇ。ただうっすらと背中にテニスバックのシルエットが見える。段々に雲が晴れて来て、人物の顔を照らす。
「!…真田」
それは俺が誰よりも待ち侘びていた人物。
「真田」
「!…跡部」
テラスに降りて声をかける。振り返った顔はやはり望んだ人物。
「おせぇんだよ。約束は7時だったろ?」
「すまぬ…今日に限って部活が長引いたのだ…。それから幸村に仕事を頼まれてしまってな…」
あのヤロー…ぜってーわざとだな。
「それでだな、跡部」
「あん?なんだ、まだなんかあんのか?」
これ以上アイツの話しはごめんだぜ。
「そのだな…家に帰らずにここに来た。だからプレゼントを渡すことが出来んのだ。
ホントにすまない…」
「プレゼント……俺様の為に……フッ」
馬鹿正直な奴だぜ。プレゼントごときで俺様が怒ると思ったのか?
「なら」
「ん?なんだ?」
「今すぐに欲しいモンがある」
「す、すぐにと言われても…今の俺には…」
気まずそうに目線を背ける。けどそれじゃ
「お前の顔が見えねぇだろ。なぁ?真田」
「あ、とべ…!」
帽子を取れば暗闇でも解るほど顔に朱がさしていた。
「心配すんな。俺様が欲しいのは」
「あとっ…んっ!」
顔を引き寄せて口付ける。サラリとした黒髪が額を掠めた。
「ふっん…あ、と…んっ」
チュッ…
「俺様が欲しいのはお前だ」
「〜った、たわけがっ!」
なんとでも言えばいいさ。
「それで、どうなんだ?俺様に委ねるだろ?てめぇのすべてを」
「きっ、今日…だけだ!」
「ハッ!これからずっとに決まってんだろ?あーん?」
「しかしだな…」
「お前は俺のモノになったんだ」
「俺は物ではない」
「そういう意味じゃねぇよ」
誕生日なんていつも同じことの繰り返しだった。けど今年は最高の誕生日だ。
一番欲してた『者』を手に入れたんだからな。
一番欲しいモノ
俺にとっては君が一番のプレゼント。
It's a special day.
END
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