「うわぁ、不動さんって料理上手なんですね!」

「あ? こんぐらい普通だろ」


そう言いながらも不動の手は止まらず、まな板の上には薄く剥かれた大根が積み重なっていく。

「ホントに上手…なんか悔しいな」

秋は羨ましい、と零し不動の手元を見ていた。


「…なんだよ、見てる暇があんなら手を動かせよ」

「はぁい♪」


ニコニコと笑って作業に戻る秋。素っ気なく返し、作業を続ける不動だったが虎丸は気付いた。

(不動さん、顔赤い)

不動の横顔がほんのりと赤く染まっていることに。


「……へへっ」

「虎丸、何笑ってんだよ」

「いえ、お気になさらず続けて下さい♪」

「……変な奴」


その後も虎丸は不動の作業を見ていた。何度か不動と視線が合うも、笑顔で受け流していた。


−−−−−

「飛鷹さーん!」

「虎丸?」

「ちょっとお話聞いて下さい!」

「あぁ、別に構わないぜ」


食事の当番が終わり、午後の自主練習が始まった時、虎丸は飛鷹を呼び止めた。


「今日の食事当番、意外と早く済みましたね」

「そうだな。お前は元々料理が出来たし、不動も手際がよくて正直驚いた」

「ホント、驚いちゃいましたよ。
俺、もっと不動さんのこと知りたくなりました!」

「お前、それって…」


虎丸はウインクをしながらペロッと舌を出した。

「好きになっちゃったみたいです♪」

そのまま走り去ろうとする虎丸だったが、チラリと振り向きニコリと笑った。


「飛鷹さんには渡しませんからね♪」

「っ!」


ペコリと頭を下げ、虎丸は走り去った。そして残された飛鷹は…

「……なんでバレたんだ?」

一人頭を抱え頬を染めていた。







知らない貴方

それはとても魅力的な貴方。
でもその魅力に気付いたのは自分だけじゃない。負けられない。


END
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