最近の俺はなんか変なんだ。
なんだかやけに心臓がバクバクする。疲れて、とかじゃなくて、不動のことを見てるとそうなるんだ。
不動を見てると心臓がバクバクして、笑ってたらもっとバクバクする。けど、俺以外の前で笑ってる時は、バクバクじゃなくてチクチクするんだ。
笑っててほしいのに笑ってほしくない。仲間に打ち解けるのはいいことのはずなのに、それが嫌だ。
何もかも矛盾してて、俺の頭じゃ理解しきれないんだ。

「なぁ、これって病気かな……って、あれ?」

俺一人じゃ解決できないと思って、この話しを風丸に聞いてもらったんだけど……なんか頭抱えてる。


「風丸?どうかしたのか?」

「いや、分かってた。分かってたさ。お前のことだしな」

「俺だから?どういう意味だ?」

「まぁ、あれだ、そんなに気になるなら本人に直接聞いたらどうだ?」


本人に直接……そっか、不動は俺より頭いいし、バクバクやチクチクの理由を知ってるかも知れないな!


「ありがとう風丸!俺、不動のとこ行ってくるな!」

「あぁ、頑張れよ……(頑張れ不動!)」


善は急げで、風丸と別れて不動を探して走った。この時間なら、不動は必ずあそこにいる。


−−−−−

「はぁ……いたっ」

この時間、不動は宿舎裏の林で自主練をしてる。知ってるのは多分俺だけだと思う。それがなんだか少し嬉しい。


「不動!」

「! 円堂…なんでてめぇがこんな所にいんだよ」


不動は少し驚いたみたいだったけど、すぐにいつもの口調に戻った。
頬に汗が伝っていて、夕陽の光りでキラキラ光ってる。ハードな練習をしてたのが分かった。そんな姿に、また心臓がバクバクする。


「不動、一つ聞きたいことがあるんだ」

「何だよ」

「俺、不動を見てると心臓がバクバクするんだ。誰かと話して笑ってるのを見ると、今度はチクチクする。
これってなんなのか、不動なら分かるか?」


聞いても不動の返事はない。そのかわり、目の前の顔が段々と赤くなっていくのが分かった。夕陽の朱に負けない赤に。


「不動?どうかして…」

「ばっかじゃねぇの?!んなこと俺に聞くんじゃねぇーっ!」

「あっ、不動!」


不動はそのまま宿舎に走って行った。俺、何か悪いこと聞いたのか?でも…

「顔が真っ赤な不動、可愛いな」







答えは至極簡単で

それは“好き”の一言。
いつか君に言えるかな。


END
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