アメリカ戦を終え、次の試合に向け練習を続けているイナズマジャパン。そんなある日の練習後、風丸と不動は風丸の部屋でくつろいでいた。
「アメリカ戦の風丸ちゃん、カッコよかったぜ。いつの間に必殺技なんか作ってたんだよ」
「あぁ、この前の練習の時吹雪にな。スピードが必要だって言われて……不動?」
「吹雪ねぇ…へー」
風丸の返答にあからさまに頬を膨らませ、むくれた不動。
「…不動」
「なん、っ!」
風丸は触れるだけのキスをした。不意打ちを喰らった不動は目を見開いた。
「好きだ、明王」
「!…俺も好きだ」
二人は再び唇を重ねた。
二人の関係を知る人物はチーム内にはいない。二人だけの秘密の恋愛事情。
翌日、いつものように練習をしている不動だったが、その様子はいささか不機嫌だった。その視線はボールを追っている風丸へ向けられていた。
FFIが開幕してから風丸の必殺技は確実に増えていた。その大半は誰かとの連携技。つまりは誰かと二人での練習が増える。不動はそれが気に入らなかった。勝つための練習とは解ってはいたが、不動の中には黒い靄が掛かっていた。
その日の練習で不動はミスを連発し、鬼道や佐久間との連携も乱れていた。
「どうした不動。貴様らしくないぞ」
「別に…なんでもねぇよ」
鬼道の問い掛けにぶっきらぼうに返すと、そのまま宿舎へと戻ろうとする不動。しかし、去り際に佐久間に肩を捕まれた。
「おい、そんな言い方ないだろ。鬼道はお前を心配して、っ!」
「っ!ふ、どぅ…」
引き止めた佐久間だけでなく、その様子を見ていた鬼道や他のメンバーも目を見開いた。振り返った不動が泣いていたから。
「ふ、不動?どうした?どこか痛いのか?」
あの円堂でさえ焦っていた。しかし誰よりも焦っていたのは勿論風丸だった。大切な恋人が何故泣いているのか。抱きしめたくても、周りに自分達の関係が分かってしまう。出かかる手をグッと堪え不動を見つめていた。
静かに涙を流していた不動が小さく呟き始めた。
「分かってる…勝つため、だって…でもっ、くるし…さみしっ…!」
周りは、何のことを言っているのか全く分からなかった。ただ一人を除いて。
「……っ」
風丸は歯を食いしばり拳を握りしめた。
(何をしてるんだ俺は!一番大切な奴を傷付けて!)
風丸は周りを押し退け、不動へ駆け寄り、抱きしめキスをした。今の風丸には周りなど見えていなかった。
「んっ、は…風ま、る…ちゃん?」
「すまない。お前を悲しませるなんて…」
「ぅう、ん。俺こそ、わがまま言って…ごめん」
二人は再び強く抱きしめ合った。一方、いきなりの展開に目や口を開ける周りは…
「風丸君と不動君ってそういう関係だったんだ」
「これで僕達もイチャイチャ出来るよ、染岡君!」
「誤解されるようなこと言うな!」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…」
「鬼道、現実逃避はやめろ」
「そういう佐久間もアイパッチ割ろうとするなよ」
各々に反応は違えど、二人を否定しようとする者はいなかった。
密恋続行不能
大切な君が悲しむのは、もう見たく無いから。
END