「不動、お前はまたトマトを残して…ちゃんと食べろって言っただろ」

「んなもん食わなくたって死にやしねぇから平気だって」

「そうじゃなくて、栄養のバランスを考えろって言ってるんだ」


「また始まったのか」

食堂で繰り広げられる、豪炎寺が“また”と言った会話。風丸と不動はトマトが食事に出る度にこの会話を繰り返していた。初めの頃は口を挟んでいたメンバーも今では何も言わなくなった。


「あぁなると風丸はしぶといんだよなぁ」

「不動も不動で頑固だからな。どちらも折れない」


円堂と鬼道のしみじみとした分析に、周りは頷いていた。

「にしても今日は随分長いな」

土方の言葉に一同は、そういえば、と二人を見遣った。


「大体、てめぇはこまけぇ事気にしすぎなんだよ!」

「細かくない!常識だ!」


「なんだか二人ともエンジン掛かかっちゃったみたいだね」

ヒロトが言うと、綱海が立ち上がって二人に近付いた。


「まぁまぁ、そう騒ぐなよ二人共。不動もさ、一口食べれば済む話しだろ?」

「うるせぇ!てめぇはコレでも食ってろ!」

「うぐっ!………(バタッ」

「あぁっ!つ、綱海さん!しっかりしてください!」


不動に何かを口に詰め込まれ、倒れた綱海に駆け寄る立向居。綱海の口からはサラダのニンジンが飛び出ていた。


「不動!いい加減に食べろ!」

「嫌だ!」

「食べろってば!」


遂に風丸はトマトを持った手を振りかぶりトマトを投げた。
それを見た不動は、近くにいたジャージを引っ張った。


「佐久間シールド!」

「うぶっ!」


不動にジャージを引かれたのは、運悪く不動の隣に座っていた佐久間だった。顔面にトマトが当たり、スプラッタさながらに果肉が飛び散っていた。


「卑怯だぞ不動!関係ない佐久間を盾にするなんて!」

「安心しろ。佐久間の死は無駄にしねぇ!」

「「勝手に殺すなよ!」」


周りからツッコミが入ったその時…


「……何してるのかしら?」

「「っ?!?!」」


全員の背筋が空気ごと凍った。恐る恐る振り向くと、ニッコリと笑顔を浮かべた秋がいた。

「これはどういうことかなぁ?」

秋が指差したのは倒れる綱海と佐久間。二人共倒れてはいるが額にはうっすらと汗が浮かんでいる。

「木野、違うんだ。これは、不動がトマトをどうしても食べないって言うから!」

風丸の必死の弁解に周りも頭を高速で上下に振った。

「…不動くん、今のは本当?」

秋は不動に狙いを定め、近づいていく……が、


「だって、あのプチュって感じが嫌で…」

「(キュンッ)」


涙目で訴える不動に秋の何かが打ち抜かれた。


「よし、悪いのは風丸くん」

「ちょっと待て!なんで俺だけ?!」

「不動くんを泣かせたからよ!可愛い子は正義!」

「可愛いのは認めるが…けどそんなの理不尽………すみませんでした!」


その時、風丸は秋の背後に魔王を見た。それは風丸以外にも見えていたとか。







宿福クライシス

勝負は元から着いていた。アイツに勝てるわけない。


END

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