「好きだ」
「だから?」
「俺と付き合ってほしい」
俺は今、告白ってやつを受けてる。でも相手はオレと同じ男。
男に告られるのは初めてじゃない。実際、今までにも何人か付き合って来た。でも今回はちょっと事情が違う。
「一つ確認な」
「なんだ」
「お前の名前は?」
「鬼道有人だが?」
「俺の名前は?」
「馬鹿にしているのか?俺の弟、鬼道明王だろ」
馬鹿にしてんのはそっちだろ!アンタ今自分で言ったじゃん!
「あのなぁ、俺とアンタは兄弟なの。きっちりバッチリ血も繋がってるの」
「それがどうした?」
どうした?じゃねぇよ!常識的に考えて無理だろ!
「兄弟は交際は出来ないの。お前仮にも鬼道の跡取りだろ?もっと常識考えろ」
「常識はわきまえている。それに兄弟が恋愛を出来ないわけがない!
『〇は◇に恋をする』も兄弟の恋愛じゃないか!」
「それは漫画の話だろうが!だいたい、なんで少女漫画なんか読んでんだよ?!」
「少女漫画と侮るな。これは俺と佐久間の恋愛バイブルだ!」
佐久間のヤロー、余計な知識植え付けやがって!てか佐久間もコイツと同類かよ…
俺アイツと友達やめよう。うん、絶対やめよう。
「これで分かっただろう。俺と付き合ってくれ」
「今の流れで何を分かれって?俺何も分かんなかったよお兄ちゃん」
「そうか。明王にはまだ早かったか」
「は?何が…」
「安心しろ。これからお兄ちゃんが手取り足取り腰取り教えてやるからな」
「安心要素が一つも見つからない場合はどうしたらよろしいんでしょうか」
「慣れるより慣れろ、だ」
「わけ分かんねぇよ!」
神様、親父、お袋、義父、影山総帥、今全力でお前達を恨む。
なぜ俺をコイツの弟にした。なぜ俺達を二人で引き取った。なぜ俺達に目を付けた?!
全部仕組んだのか?グルなのか?!
「仕組まれてなどいない。俺とお前がともにいるのは運命なのだ」
なにを目細めてカッコイイこと言ってんの?!別にかっこよくもなんともないからな!
「あぁ、義父さんのことを心配してるのか?それなら問題ない。
義父さんには俺から話してある。義父さんも喜んでいたぞ」
喜んで、た…だと?
「……け、な…」
「? どうした、明王」
「っざけんなーっ!!
こんな家出てってやるーっ!」
異次元恋愛聖書
それは兄にとっての聖書。
そして弟にとっての大迷惑。
END