カラッ カリッ…

「………」

カリッ ガリッ

「…不動、さっきから何だ、その音は」

「んぁ?」


今日は不動を家に連れて来た。気まぐれなんかじゃなく、不動が俺の恋人だから。
二人で過ごすからと言って寄り添ったり、二人で何かをしたりするわけじゃない。お互いに時間を共有するだけで、することは互いに違う。
俺はソファーに座って雑誌を読んで、時々不動の様子を見ている。不動は俺のベッドを我が物顔で占領し、寝転がっている。
お互い口は開いていないし、窓も空いていない。しかし先程からカリッやカラッと小さな音が聞こえている。耳を澄ませば、音の発信源は不動らしくわずかだが口元がモゴモゴと動いていた。
そして冒頭に戻るのだ。


「さっきから何の音だと聞いている」

「あぁ、これ」


不動が歯で挟んで見せたのは小さな球体。黄色い球体でわずかだが甘い匂いがした。


「飴か?」

「せーかい。ポケットに入ってた」


そう言ってまたカラカラと口で飴を転がしはじめた。飴など、最後に食べたのは小学生の時だったか。そんなことを考えていると急に飴が欲しくなってきた。雑誌をソファーに置き、立ち上がってベッドに近付いた。


「不動、俺にも飴をくれないか」

「残念、コレ最後の一個。鬼道ちゃんボンボンだろ?飴ぐらい後で大量に買ってもらえよ」

「生憎俺が欲しいのは、その辺にはないんだ」

「けっ、自慢かよ。お坊ちゃんは庶民と味覚が違う…んっ!?」


不動の言葉を遮って、顎を捕らえて口づけた。舌を差し入れ不動の口内の飴を奪い取った。
ついでに不動の口内を掻き回す。

「んっー!んんっ!」

胸を叩いて息苦しさを伝えてくる。もう少し堪能したかったが、調子に乗るのはやめておこう。
しかし…

「お前のことだからバナナ味だと思っていたんだがな」

不動の舐めていた飴はバナナ味ではなく、レモン味だった。酸味が少し強い。だが後味は仄かに甘く、とても俺好みの味だった。


「テメェ…前触れなくキスした上に飴まで取りやがって!」

「だから言っただろう。俺が欲しいのはその辺にはないんだ、と」

「あぁ?」


訳がわからない。という顔をする不動の耳に囁いた。

『お前の食べているのが欲しかったんだ』

言ったら凄い勢いで殴られた。視界の端に映った不動の顔は真っ赤になっていた。
怒っていたと思えば、時にとても可愛い顔をする。まるでレモン味の飴のような奴だと思った。







君テイスト

酸味と甘味、9:1の黄金比


END
 
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