「! 待て!最初に不動を二流と言ったのは影山、お前じゃないか!」

鬼道は、そうなのか?と佐久間を見遣り、影山は、何故あの場にいなかったお前が知っている。と言う表情をしていた。しかし当事者であるはずの不動は…


「?あれは総帥じゃなくて総帥の部下だろ?
なぁ、そうだよな総帥」

「はぁ?!そんな長髪グラサンがこの世に何人もいてたまるかよ!」

「だってよぉ、総帥がそう言ったし」

「この純粋ピュアっ子が!!」

「落ち着け佐久間!不動の純粋ピュアはステータスだ!希少価値なんだ!」


暴れだしそうな佐久間を鬼道が必死に抑える。そんな様子を気にもせず、不動は言った。


「総帥、俺あの偽鬼道ちゃん嫌〜い。今すぐ始末…」

「コイツのどこがピュアなんだ?!思いっ切り俺のこと始末とか言ってんだけど?!
てか今までの会話にもツッコミ所が多すぎるんだよ!」


話しについて行けずにいたデモーニオがとうとうツッコんだ。どうやらほとんど最初から我慢していた……と言うより、どこからツッコんでいいのかわからなかったらしい。


「デモーニオ静かにしろ」

「総帥っ!」

「不動がお前を嫌がっている」

「このショタコンがぁぁ!」


デモーニオはゴーグルを外しグランドにたたき付けた。レンズにはピキッとヒビが入った。
あらわになったデモーニオの目。それを見て不動は目を見開いた。

「総帥、降ろせ」

命令口調を気にせず、影山は不動を降ろした。不動はデモーニオに近寄って顔を両手で掴んだ。


「……ジーッ…」

「なっ、なんだ…?」


先程泣かれているため、デモーニオはなるべく優しく問い掛けた。


「お前の目、スッゴく綺麗!」

「っ!?///」


ニッコリと、宝物を見つけた子供のように笑ってそう言った不動。その笑顔に、デモーニオの顔が瞬時に朱く染まった。
もちろんそれを見ていた他のメンバー。いつの間にか鎮まった鬼道と佐久間がデモーニオから不動を引き離した。
もちろん、殺気を送ることを忘れずに。


「敵が増えたな、佐久間」

「心配ない。手を出そうものなら……な?」

「あぁ、そうだな」


頭上で黒いオーラを纏いながら言葉を交わす二人の会話が理解出来ず、頭に?を浮かべる不動。
そんな不動を可愛いと思いながらも、鬼道と佐久間は殺気を送り続けていた。
それに対抗してか、デモーニオからも鋭い視線が二人に送られていた。


「……不動はもらった!」

『『影山ぁぁぁぁ!!』』


その隙を見て影山が不動を奪取し、逃げた。何故かグランドにいる全員が叫んでいた。


『皇帝ペンギン2号!』

「皇帝ペンギンX!」


影山の背中に向かって二つのシュートが放たれた。

「うぐはっ!」

一つは頭。一つは背中に命中し、影山は不動を放り投げる形でその場に倒れ込んだ。
そして投げられた不動は…

「うぉわぁぁぁぁ!!」

綺麗な放物線を描き、ある人物の元へ。


ポスッ


「大丈夫かい?不動」

「え、お、おぅ」


不動を受け止めたのはフィディオだった。


「ありがとな、フィディオ」

「お礼なら、こっちの方がいいな」


チュッ


「へっ」

フィディオの行動に不動だけでなく全員の動きが止まった。
フィディオが不動にキスをした。頬なら挨拶でよくあることだが、あろうことかフィディオは不動の口にキスをしたのだ。

「ごちそうさま」

フィディオは気付いていなかった。背後に忍び寄るペンギンの気配に。

そして、先程からずっとゴールで様子を見ていた円堂は…


「皆サッカーやろうぜ。てか不動は俺の嫁だし」


一人呟き、ニコリと笑って足元に、これまたどこから持ってきたのか、黒いサッカーボールを置いた。
円堂の纏うオーラに気付く者もまたいない。







スイッチON

それが争奪戦開始の合図。

(勝つのは俺って決まってるけどな!)


END

 
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