※キャラって何だっけ?な状況。
イロイロ迷子。
それが無理な方はバックプリーズ。
イタリア代表決定戦。張り詰めた空気の中、お互いの力をぶつけ合う……はずだった。
しかしその試合は、試合の最中にチームKのキャプテン、デモーニオが放った一言でなんとも締まりのないモノになってしまった。
鬼道の指示がうまく飛ばない状況が続く中、ボールを奪おうとデモーニオをマークしていた不動。
デモーニオは不動にだけ聞こえるようにこう言った。
「お前の様な二流品が総帥の作品とわな」
「っ!」
その言葉に不動は動きを止め、地面にへたり込んでしまった。
「不動!」
「あ、鬼道!」
すぐに駆け寄る鬼道とそれを追う佐久間。
「不動、大丈夫……!さ、佐久間!?」
「まっまさか…!?」
不動の様子を見た鬼道はあることを察した。そして問い掛けられた佐久間も、思い当たる節があるのか、顔色がサァーっと一瞬にして青くなった。
「…っ!…」
俯き、唇を噛み締め手を強く握りしめる不動。そんな様子の不動を見てデモーニオはニヤリと笑った。
「なんだ?意気がっていた割に脆いな。
やはり二流ひ…」
『皇帝ペンギン2号!!』
「ぐふぁ!」
『デモーニオ!?!』
再び不動を二流呼ばわりしようとしたデモーニオの顔面に、どこから持ってきたのか知れないが、黒いサッカーボールがヒットした。
それをゴールから見ていた円堂は目をキラキラと輝かせていた。
「すっげー!鬼道に佐久間、お前達二人だけで皇帝ペンギン2号が打てるようになったんだな!」
皇帝ペンギン2号は本来は三人で打つが、今のシュートは鬼道と佐久間、二人だけで打たれたモノだった。そして二人は禍禍しいオーラを纏っていた。
「貴様、今すぐ不動に謝れ!」
「そうだ!土下座して頭を芝生にこすりつけるんだっ!」
円堂の言葉には耳を傾けず、二人はデモーニオに言い放った。
「ハッ! 俺は本当の事を言ったまで……っ?!」
突然デモーニオの言葉が止まった。デモーニオが見つめる先には不動。そして不動は
「ぅっ…ひっく、!」
泣いていた。エメラルドの瞳いっぱいに涙を溜め、懸命に声を抑えながらしゃくり上げていた。
「なっ……ッハハハハハハッ!よほどメンタルが弱いらしいな!
やはりお前は二流だっ!」
プツン-…
何かの切れる音が確かにした。瞬間、鬼道と佐久間から尋常ではない汗が流れ出た。
「い、今…」
「あ、あぁ……切れた」
二人はそろりと振り返った。
「…に、りゅ………っデモーニオが俺のこと二流って言ったぁぁ!
うわぁぁぁん!」
不動が突如大声で泣き出した。これにはフィールドにいた全員が目を見開いた。
「あぁっ!始まった…大丈夫だ不動、お前は二流なんかじゃないぞ」
「そうだぞ。お前は真・帝国学園のキャプテンを勤めたんだ。
お前は一流のサッカー選手だぞ!」
鬼道と佐久間は素早く不動と同じ目線に屈み、頭や背を撫でながら優しく言葉をかける。まるで小さな子供をあやすように。
普段の三人の関係を知っている円堂は最初こそ驚いたが、数秒後には『アイツ等も仲良くなったな!』と解釈していた。
「ぅう、…っひく…」
「不動、宿舎に帰ったら一緒にバナナケーキを食べよう。な?だから機嫌を直せ」
鬼道が言ってみても、不動はイヤイヤと首を横にしか振らない。揚句の果てにこんなことを言い出した。
「げん、だ……っ源田に会いたいよぉ!」
これには鬼道と佐久間も頭を抱えた。
「そうだ、不動の世話はいつも源田が焼いていたんだ。確か前回も源田が鎮めたんだよな」
「アイツしか対処法を知らない、ということか。
しかしアイツは今日本だ。今すぐ連れて来るなど…」
「私に任せてみろ」
『影山?!』
どうするものかと唸っていた二人にチームKの監督である影山が歩み寄ってきた。
二人は身構え、不動を守るように立ち塞がった。が、不動は立ち上がり影山に駆け寄った。
「そーすい〜!」
ギュー
『はぁぁぁぁぁ?!?』
鬼道と佐久間がこれでもかと口を開いているのを余所に、影山は不動を抱き上げ背中をポンポンと叩いた。
「う〜、総帥〜」
「よしよし」
不動は自ら影山に擦り寄っていた。とても嬉しそうに。
その様子を呆然て見ていた鬼道と佐久間だったが、佐久間があることに気がついた。
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