私の恋人、中在家くんはあまり表情を表に出さない。しかも、嬉しい時は顔を歪め、怒ると笑う。少し不思議だが、最近はそれにも慣れてきた。
お互い、なかなか会うのが難しい位置にいるが、適度に会えてはいた。今日も任務の合間を縫って来たのだが…


「長次!バレーしよう!」

「待て……もう少し…」


中在家くんは、常と変わらず書物に目を通す。その傍らには、当たり前にその場にいる彼の級友。


(七松くん、と言ったか…)

「羨ましい…」

「「!」」

「……長次!バレーはまた今度だ。伊作と約束をしていたのを忘れていた!」

「小平太……そうか…わかった」


突如彼の隣を離れる七松くん。彼の姿が離れると、双眼がコチラを射抜く。もう隠れる必要もない、か。


サッ…

「やぁ、中在家くん」

「…こんにちわ…雑度さん…」


私の登場を確認すると、視線をまた書物に戻す。私に興味が無いかのように。

「……級友の、七松くん…だったかな?彼とは仲むつまじいのに、私の来訪は喜んでもくれないのかい?」

拗ねたように背中に被されば、少しいらついた様な視線を寄越したあと、小さく息を吐かれた。

「小平太は、ただの友だと言ったはずです…。
…さっきも、貴方の気配を感じて…私の元を去った…」

あぁ、やはり気付かれていたか。と言っても、半分以上わざとだったりするのだが……恐らくそれすらも気付かれていたのだろう。

「私ばかり嫉妬していては、なんだか不公平じゃないかな?」

我ながら子供じみた嫉妬など、とは思っていても、やはり愛しい者には嫉妬の一つもしてほしい。
すると、また一つ息を吐かれた。


「…本気で、おっしゃっていますか?」

「え、そりゃ…!」


突如振り向いた、恐面ながらも愛しい顔。それが今目の前にある。
布越しに触れた感触。布越しでもわかるほどに柔らかい。考えずとも分かる。お互いの唇が触れていると。
そっと離れる感触。それを惜しく思いながらも表情を伺うと、俯いていても分かるほど真っ赤になった顔があった。そしてそれは小さく呟かれた。





いくらでも嫉妬してあげますよ

思っていた以上に私は愛されているようだ。


END

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イケイケな組頭と恥ずかしがりだけど組頭大好きなフェアリー。
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