誰か教えて下さい。

「好きだよ、トキヤ」

今の私の状況は、目の前には音也の顔。その奥には天井。
所謂、押し倒される、といった状況。

「トキヤ…もう離さないよ」

どうしてこうなったのか。

−−−−−

最近、妙な視線を感じるようになった。
全身をなめ回すような、決して心地好いとは言えない視線を。


「トーキヤ!」

「っ! あ…音也、ですか」

「どうしたの?ボーッとして」

「いえ、なんでもありません」


後ろから飛びつく、という行為はいつになっても慣れない。
でも正体が音也だと分かると、一気に安堵が押し寄せる。
なぜだかわからないが、音也が私に触れると、途端に視線が消える。

この意味に、もっと早く気が付くべきだった。

−−−−−

視線が消えたのは当たり前だった。
…私に触れていた者が、視線の主であったのだから。

それに気付かず今の状況、と言ったところか。


「音也、どいて下さい」

「嫌だよ。俺はトキヤと離れたくない」

「我が儘を言うんじゃ、っ!」


言葉を遮るように塞がれた唇は、いつもより荒く乱暴で、そして……欲深かった。
苦しくて、切ない。そんな気持ちになるキス。


「っん…は、ぁ…」

「トキヤ、気持ちいい?」


壊れ物を扱うような手つきで頬を撫でる手を振り払う。

「貴方はっ、私の知る音也じゃありません…!」

睨みつけると、茜色の瞳を少し見開き、再び細めた。
そして口角を引き上げた。


「俺は俺だよ。他の俺はいない。
いつもの笑ってる俺も、今トキヤに触れてる俺も、寸分違わず一十木音也だよ」

「しかしっ、今まではっ!」

「今までは…か……確かに今までは主人に懐く犬みたいだったかも知れないね。
でももうやめるんだ」

「……なぜ…」

「なぜ?そんなの…」





純粋ごっこに飽きただけ

これがホントの俺だから。


END
−−−−−
キャラ掴めてないとかまさかそんな
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