貴方との出会い。
それが、雷門サッカー部の始まり。
そして、私の恋の始まりだった。


「そっちはどう?」

「もうちょいっ、うわぁ!」

「え、円堂くん!?」

「あはははっ!大丈夫、大丈夫!」

「もぅ……ふふっ」


二人で物置になってた部室を埃まみれで片付けて、『サッカー部』のプレートを見つけてはしゃいでた。
あの時から、円堂くんに出会ってから、私の毎日はキラキラと輝いていた。
部員を集めて、フットボールフロンティアに出て優勝した。
エイリア学園とも戦ったし、FFIで世界一にもなった。
でも、そこで私の毎日から光が消えはじめた。

中学を卒業して、皆それぞれの道に進んだ。
交流は少なかったけど、時々河川敷に集まってサッカーをした。
いつからだったかな……円堂くんの隣に、あの人が並ぶようになったのは…
あの人のことは、とても素敵な女性だと思う。
でも、やっぱり素直に認めることが出来なかった。
高校を卒業してからしばらくして、一通の手紙が届いた。
差出人は円堂くん。
字がまったく変わっていなかった。
思わず零れた笑みも、手紙の内容を考えると嘲笑に変わる。
可愛らしいピンクの台紙、白いレースのリボン。
中を開けばやっぱり笑ってる二人がいて、肩を寄せ合って幸せそうに。

「……おめでとう、円堂くん」

言葉にしたら、自然と視界がぼやけてきた。
拭っても拭っても、それは止まってはくれない。
静かな室内に、私のくぐもった声だけが聞こえる。
そんな中、携帯電話が鳴り出した。
確認しなくても、これは彼専用のメロディー。


「っ……もしもし?」

『俺だよ。さっき、円堂から手紙が届いたんだけど……泣いてたの?』

「っ!…やっぱり、分かっちゃうか」


普段通りに振る舞ったつもりだったのにな。


『秋…俺、今でも秋のこと好きだ』

「えっ」

『円堂の手紙…この時に日本に帰るから、その時に返事を聞かせて欲しい』

「……うん、分かった」


彼はどうしてこんなに優しいのかな。
人の幸せを素直に喜べない私なんかを、好きって言ってくれる。

「ありがとう…ぃ、のせ…くんっ…!」

数ヶ月後、私は笑顔で円堂くんを祝福した。
隣には、優しく微笑む彼がいて、腕を組んで会場に入ったら皆がビックリしてたっけ。
何故か円堂くんが一番驚いてた。
式の終盤、白い花が束ねられた小さなブーケが宙を舞った。
それは、綺麗に弧を描いて私の腕に収まった。
そしたら彼が、次は俺達だね。なんて言うから、凄く恥ずかしかった。

少し騒いだ後で、一人でいる円堂くんを見付けた。
一言だけ、言いたかった。


「円堂くん」

「秋、どうかしたのか?」

「ううん。ただ、一言だけ言わせて。
これが、最後だから」

「…あぁ」


深呼吸をして言葉を吐き出す。


「私、木野秋は、サッカー馬鹿な円堂守が大好きでした」

「っ!?あ、秋…」

「それだけ…じゃあね」

「まっ、待ってくれ!
俺にも一言だけ、言わせてくれ」


引き止められて、円堂くんに向き合う。
円堂くんも深呼吸をして、言葉を紡ぐ。


「俺、円堂守は、いつも一生懸命な木野秋が大好きでした」

「っ!……っ、ふふふっ」

「っはははははっ!」

「ふふっ……幸せにね」

「あぁ、秋もな」


私の恋は終わりを告げた。
これからは、彼との愛が始まっていく。


END

−−−−−
公式を否定するわけじゃないです。
でもサッカー部設立を考えたら…
仄裏はいいんです、秋ちゃんが幸せなら。
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