「剣城、ちょっと聞いてもいい?」
「…なんだ」
「剣城ってさ、俺のこと好き?」
「とりあえず、そのおめでたい頭にデスソード一発喰らうか?」
剣城は口元が笑ってても、目が笑っていない。
つまりは本気。
「とりあえずごめんなさい」
「ったく…」
そう言ってそっぽを向く剣城。
あぁは言われたけど、やっぱり恋人としては気になる。
告白したのも俺からだし、OKはもらえたけど、未だに剣城の口から『好き』って聞いたことがない。
「好きじゃないのかな…」
「何をだ?」
「何って、剣城が俺のこと……え?」
一人のはずが成立した会話に振り返る。
そこには、楽しげに笑みを浮かべるピンク色。
「霧野先輩…いつからそこに?」
「剣城が、デスソード一発〜って言ったあたり?」
「最初から居たんですね」
「まぁそういうこと。
で、いつも元気な松風はどこ行った」
霧野先輩の人差し指が、俺の額を突いて顔を押し上げる。
自然に下がっていたらしい視線に、霧野先輩の姿が映る。
「知りたい事は本人に聞くのが一番だ」
「いや、先輩も見てましたよね?
本人に聞いて玉砕したんですけど…」
「男ならしつこく、ねっちょり行け!」
「ねっちょりってなんですか?!」
「知らん!」
以前から思ってはいたけど、霧野先輩はあれだ……うん。
「しつこく、か……霧野先輩、俺っ……あれ?」
一度、考えるのに視線を逸らすと、次に見た時、霧野先輩はいなかった。
まぁ先輩はどうでもいいとして、玉砕(もうしてるけど…)覚悟で愛しい彼の元へ!
「剣城!」
「またお前か……今度は何の用だ」
「剣城は…俺のこと好き?!」
「!? てめっ、さっき言ったこともう忘れたか!」
「忘れてない!喰らってもいいから教えて!」
逃がさないように、しっかりと剣城の身体を抱きしめる。
耳元で叫ぶ声が聞こえるけど、全部聞こえない振り。
諦めたのか、次第に大人しくなる剣城。
少し身体を離して顔を見る。
「剣城、言う気になっ………」
「っ〜」
どうしよう…俺の目の前に、顔を真っ赤にした可愛い子が一人。
今すぐキスして押し倒したい。
けどそれは好きどうこう前に嫌われる。
「え、えと、剣城?」
「嫌い、なら…一緒に居たりしねぇよ…
それじゃ…ダメ、なのか?」
潤んだ瞳、赤らむ頬、震える声…とりあえず俺の理性が切れない要素が見付からない。
それに、そんなこと言われたら…
「もぅ、仕方ないなぁ!」
ダメなんて言えるわけないよ!
なんてったって、可愛い剣城の頼みだからね!
これでもかってぐらい、剣城を抱きしめた。
今度は抵抗も罵声もない。
「剣城、大好き!」
「…そうかよ」
君からの好きはまだ無いけど、代わりに、俺からの好きをたくさんあげるから。
END
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天馬は京介くんには勝てません。色んな意味で。
仄裏の中で蘭丸はおかしな子です。