「ん…ふぁ〜……朝練行かな…」

まいど、夕べは色んな意味で一戦を踏み止まったユウジや。
白石の話しでは、健二郎は今日の部活時間には戻るらしいけど、それまでの時間はどないするんやろ。
まぁ気にしてもしゃーないし、健二郎起こして部活行こ。


「健二郎、もう部活の時間やで、早う起き」

「ん……〜ん…」

「…起きひん子はお留守番やなぁ」

ピクッ

「ほな、行ってくる『おきた!ぼくもいく!』はいはい」

やっぱり小さいうちは一人なりたないよな。
起きとったんか寝とったんか分からへんけど、可愛いやっちゃ。
そない遅い時間やあらへんけど、多分今日は謙也よりも先に白石とか来とるんちゃうか。





「コォォォイィィィィちゃぁぁぁぁん!
会いたかったで〜Vv」

「くぁちゃ、おはよ(ニコッ」

「すんません!
朝やけど堪忍してーな!
襲わせて『誰が許すかぁぁぁぁ!』

スパーンッ!


「Σぃった!…っユウジ……なんでハリセンなんか持ってんねん!?」

「アホか、芸人の必需品や」


まったく、油断も隙もあらへんな。
それよりもあのこと聞かな。


「なぁ白石、健二郎が戻るんは部活の時間なんやろ?
やったら放課後までどないするん?」

「勿論俺が面倒見たる!」

「えぇんか白石。
今まで無遅刻、無欠席のお前が一日授業受けへんなんて」

………

「謙也、お前いつの間に来てん」

「ついさっき、ユウジがハリセン出した辺りから」

「ほとんど初めっからやんけ!」

「まぁ細かいこと気にしたらあかんっちゅー話や!
で、どないするん?」


謙也が問い掛けたんは白石。
確かに、ここで一日授業サボってもうたら聖書の名が泣くわなぁ。


「…っやっぱりコイちゃんと一緒がえ『健二郎は俺が面倒見とくばい』Σ千歳!?」

「朝練にお前がおるなんて、どんな心境の変化や?」

「謙也くん酷かね…朝ん散歩ばしちょったら銀さんに捕まったばい」

「銀さんさすがやわ〜♪」

「浮気かー!?」

「ちぃちゃ、うわきってなに?」

「まだ知らんでよかよ〜」


ホンマにうちの部活は神出鬼没やで…謙也に銀に千歳……財前なんか隅で音楽聴いとるし…


「ほんなら、健二郎は千歳に任せるわ」

「?…分ったばい(ユウジ、いつん間に健二郎んこつ名前で呼ぶようんなったと?)」

「ほんなら部活…って、もう終いやないか!」


まぁあれだけ騒いどったらしゃーないわな。
うわ…財前メッチャ不機嫌やし…
まぁ被害は全部謙也に行くやろうし、問題あらへんな。





あのあと健二郎を千歳に任せてはみたけど…


「やっぱり気になるわ…」

「千歳君なら大丈夫よ」

「小春…」


俺の心を読んだかのようなタイミングで話し掛けて来た小春。
ホンマに俺のよき理解者や!


「千歳君はあぁ見えてしっかりしてるし、安心してえぇと思うよ?」

「……せやな、俺もアイツに任すって決めたし……メールや…」


いきなしメールが届いた。
ディスプレイの名前は『千歳』

「なんやろか」

とにかくメールを開いては見たものの…


「あらま♪」

「小春〜、アイツはシバいて欲しいんかな?
殺して欲しいんかな?
葬って欲しいんかな?」

「多分どれもハズレだと思うわよ?
それとユウ君、笑顔でキャラ崩したらあかんよ♪」


んなもんは多分頭のどっかでは分かってんねん。
でも、そない思わん奴おるんか?!
千歳が送ってきたのは、寝とる健二郎の髪を笑顔で撫でる自分の写メと『キスしてもよか?』っちゅー内容の本文。
これを見ての最終判断は『自殺願望を持ち合わせている』や。
俺でなくとも思うはずや。
強いて挙げるなら、白石と財前やな。

「まぁとりあえず返信はしたるわ。
あないなモン送り付けよって…!」





「お、ユウジからのお返事ばい」

「ゆぅちゃから?」


実は小石川は寝たふりをしていただけであった。
朝のユウジの、小石川に対する名前呼びが気になった千歳は、少し鎌をかけてみたのだ。


「えーっと…『お前に自殺願望が有ったとは思わへんかったわ。
後で殺りに行ったるから、楽しみにしとれ♪』って…ユウジって案外怖かね;」

「ねぇちぃちゃ、ゆぅちゃ、なんて?」

「ん?あぁ、ちゃんといい子にしちょって、健二郎は偉かね。って」

「ぼく、えらい?
……いい子!ゆぅちゃにほめられた♪」

「(むぞらしかぁ…ユウジ、良く一晩堪えられたばいね。
俺なら今ん一瞬で終わっちょる)」


千歳のユウジへの株が上がった瞬間だった。





「ところでユウ君、さっきのメール、なんて返事したの?」

「あれか?
優しさと殺意と脅しを、1:6:3の割合で込めて送ったった♪」

「そう(ほとんど殺意と脅しなのね;)」


小春がユウジの本性を垣間見た瞬間だった。



−昼休み−


「……はぁ…」

「ため息なんかついて、ほんまにユウ君はケン坊が好きなんやね♪」

「………は?
小春、何言うて…」

「やってそうやろ?
なんやかんやで千歳君信頼して、ケン坊預けて…それでも心配なんやろ?」

「それは…」


すぐには言い返せへん。
そんなに簡単なことやないから。

「否定はせぇへん…というかでけへん。
確かに千歳は信頼しとる。
同じチームメイトやし、何よりえぇ奴や。
でも、健二郎は別や…なんでか分からんけど別やねん…」

どーでも良いと思ってたことが一晩で変わるかなんて、そんなんわからんし。


「それが好きってことやないの?」

「そう、なんかな…
ただ、一つ引っ掛かることがあんねん」

「なに?」

「俺は今まで健二郎のことは、えぇ奴やとは思うとっても好きっちゅーわけやなかった。
やから、俺が好きなんは今までのでっかい健二郎なんか、今のちっこい健二郎なんか…」


健二郎も、俺の気持ちも、変化が大きすぎたんや。
自分がついていけん、ついていかへん。
理解したい…やのに、思考にモヤがかかって、俺の邪魔をしてくる。


「ユウ君、蔵リンみたいにオープンになってみたら?」

「……無理に決まっとるやん!
あないな変態になんてなられh『コイちゃぁぁあぁん!!』…」

「蔵リンたら、教室の窓から叫んでるんやね♪」

「いやいや、笑い事ちゃうし;」


あれが今、お前が俺に『なれ』と言った男の姿やぞ!とは流石にツッコめない。
そのままモヤモヤした授業を受けた。
それと、叫び声のせいで余計に気になってもうたから、昼休みには白石を殴りに行った←
もちろん千歳への脅s……心配のメールは忘れずに。


『ほんなら今日はここまで』


「やっとや…なんや一日が長かったわ…」

今日は授業やけに長かった気ぃする…
しかも全部の授業で当てられるってどないやねん!?
今日の日付、俺の出席番号とかちゃうのに!


「ユウ君、今日は災難やったね♪」

「笑顔で言わんといてぇな…」

「まぁえぇやないの、これで部活に行けるんやから♪」

「…せやな、これでやっと健二郎に会え……あ…」

「フフ、やっぱりケン坊に会いたかったのね♪」

「ち、ちゃうわ!
早う部活行って千歳を(あの世に)送ってやれるってワクワクしとるだけや!」

「はいはい♪(千歳くん無事だと良いわね)」


待っとれよ千歳…健二郎になんかあったら三途の川往復させたるからな!


「Σ!(な…なんか悪寒を感じたばい)」

千歳、野生の勘により身の危険を感じた瞬間。


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