まいど、前回くじ引きで一晩小石川を預かることになった一氏や。
まぁ小石川言うてもちっこいねんけどな。
今は家でのんびりしとる。
誰もおらんし、小石川も、いつの間にもろたんか(多分千歳辺りやろな)ト〇ロの人形で遊んどる。
俺も小春との新ネタの衣装作らな。
けど、子供も案外かわえぇかも知れんな……って…俺のキャラちゃうし。
「ゆぅちゃ」
「ん、どないした、小石川」
「おなか、すいた」
時計を見れば6時を少し回ったところやった。
少し早い気もすんねんけど、今日は何かとあったしな。
「えぇで、何が食いたい?」
「パセリ」
やっぱりパセリなんかい!?
しかも即答しよったでコイツ……どんだけパセリ好きやねん…そもそもいつから好きなんや…
「パセリ……他に食いたいもんないんか?」
「うー………!たこやき!
ぼくったこやきたべたい!」
「たこ焼きか…よっしゃ、俺がとびきり旨いたこ焼き作ったる!」
「うわーぃ♪」
ドキッ…
な、なんや今の!?
ドキッってなんや?!
何をトキメいてんねん!
小石川やぞ?ちっこいだけで小石川やぞ!?
俺には小春がおるやんか!
浮気か?!死なすど俺!
「ゆぅちゃ、おねつ?
おかお、あかぃ」
「だ、大丈夫やで!
さ、さぁ旨いたこ焼き作るで!」
あぁ、なんや調子狂うてきた…なんでや……なんでさっきの笑顔が離れへんねん…
小石川のことはえぇ奴やと思うとる。
副部長としてしっかりしとるし、真面目やし、小春に手ぇ出さんし…
「でも、ちゃうねん…」
今、俺が小石川に対して感じとるんは、なんや言いようのない気持ちやねん…
ジュー…
クルッ
クルッ ジュー…
「出来たで、ユウジ特製たこ焼きや!」
我ながら完璧や!
外はカリッと、中はとろ〜りや!
ソースにマヨネーズに鰹節の香がたまらんで!
「さぁ食え!熱いから気ぃつけや」
「うん!」
楊枝を渡して注意する。
できたてやから火傷してまうからな。
「ふー…ふー…」
熱を冷ますために動く唇に自然と目がいってまう。
子供独特の柔らかそうな唇。
あかん…今の俺、完璧変態やんけ……白石とちゃうねんから…
「ふー……ぁーん…!おいし!」
「さよか、そらよかった」
「ゆぅちゃも、はぃ♪」
ニッコリと効果音の付きそうな笑顔でたこ焼きを俺に差し出す小石川。
「……かわえぇな…」
「ゆぅちゃ?」
「なーんもあらへんよ。
おおきに、健二郎」
「!…うん♪」
あれ…今、俺コイツのこと名前で呼んだか?
「重症やなぁ…」
健二郎にもらったたこ焼きを口に放る。
旨いはずやのに、味がよぅ分からん。
「ごちそーさまでした!」
「お粗末さん、ほな片付けよか」
味はよう分からんかったけど、旨かった。
やって健二郎も笑うて…
パリーンッ!
「Σ健二郎!?」
音からして、皿の割れた音。
もちろん俺の他には健二郎しかおらん。
「健二郎!大丈夫か!?」
「ゆぅちゃ…っ、うぇ…ち、でたっ」
割れた破片で切れた指から血が出とって、健二郎は泣いとった。
「大丈夫やで健二郎」
健二郎の手をとって、切れた指をそっと口に含んだ。
「っ…」
「我慢しぃや」
口ん中に広がる独特の鉄の味。
ほんまは、他人の血は触らん方がえぇねんけどな。
「もう止まったやろ」
傷もちっさかったから、ちっこい絆創膏貼ったった。
「ゆぅちゃ、おおきに(ニッコリ」
「!……お礼なら、これでえぇで」
チュッ
「ごちそうさん」
触れた唇はやっぱり柔らかくて、たこ焼きのソースの味と鉄の味が混ざった。
それにしても、なんや健二郎、さっきから黙っとるけど…
「健二郎、どないして…!」
「〜っ///」
「(なっ…なんちゅう顔してんねん!?)」
健二郎の顔は、耳まで真っ赤に染まっとった。
そ、そりゃキスしたんやから照れるんは当たり前やけど…
「(可愛すぎやぁあぁぁ!!)」
なんでや、こん年やったらキスくらいしたことある…………よな?
「健二郎、もしかして…チューしたん初めてか?」
「……///(コクッ)」
「…さよか…」
なんや今になってむっちゃ恥ずいわ!
とりあえず、すぐに健二郎を風呂場に押し込んだ。
さすがに今の状態で一緒に入ったら俺、犯罪者になりそうや…
「なんや不安になってきたわ……小春に電話してm【ん〜エクスタシー…ん〜エクs】Σなんでやねん!?
なんで着メロ変わってんねん!
(ピッ!)なんじゃいワレェイ!?」
『Σなんで喧嘩腰なん!?』
「なんや白石かいな」
『なんやとはなんや!』
「俺は今小春に電話しようと思っとったんや」
ホンマにタイミングの悪いやっちゃな…
『俺の方が重要な用件や!
コイちゃんは、俺のコイちゃんは無事なんか!?』
【俺のコイちゃん】…か…
「そない焦らんでも、今風呂や」
『Σお風呂!?ユウジ、今からお前ん家行って「来たら死なすど、ドアホが」
プツッ…
「俺かてヤバいんや……アイツが耐えられるわけないやん」
健二郎の身を護るためや。
「ゆーちゃー」
「上がったか」
「やっぱパジャマはデカイか」
まぁ予想はしとったけど、上しか着とらんのにワンピースみたいやなぁ。
次のコントの衣装はこんな感じにしよかな。
「って…言うてる場合とちゃうやん。
まぁしゃーないか…健二郎、布団持って来るさかい待っとけや」
「うん!」
「健二郎〜、布団持ってき『スーッ……スーッ…』なんや、寝てしもたんかいな」
しかも俺のベッドやんけ…
「しゃーないな、俺が布団で寝る(キュッ)ん?」
「ん〜……スーッ」
小さな手が俺の服の裾を握った。
その小さな身体のどこにそんな力があるんかと不思議に思うほどに強く、しっかりと。
「…甘えん坊さんやんなぁ」
健二郎に布団を被して俺も潜り込む。
ちっさい身体抱きしめて、瞼を閉じた。
「ほんま…けったいな一日やったで」
自分の下から聞こえる小さな寝息。
そんな些細なもんさえ愛おしなった。
「明日には戻ってまうんやな……健二郎」
なんや女々しいけど、願わくばこのまんま…
「なんて…な…お休みや、けんじ…ろ…」
「お休み…ユウジ…」
→小石川健二郎の復活