なんなんだ、この気持ちは…
今までこんな気持ちを覚えた事は無かった。
なぁ…教えてくれ。
そして、俺をこんな風にした責任は取ってもらうからな。




「鬼道く〜ん」

「なんだ、フォーメーションの確認なら先ほどしただろう」

「なんだよ、用がねぇと声かけちゃいけねぇのかよ」

「いや…そんな事はない」


いつも、開口一番にお前の口から出る名前は【鬼道】
俺の名前を呼んだことなんか片手で数えられるぐらいだ。
初めは無関心に返す鬼道も、満更でもない。といった表情を出す。端から見れば二人は両想いだ。
なのに俺は、それを分かったうえで間に入る。


「鬼道、不動、そろそろ夕飯の時間だぞ」

「あぁ、すぐに行く」

「それじゃ、俺は先に行くから」


すぐに行く。そう言いながらも、再び二人の会話は始まる。
分からない。何故自分が二人の間に入ろうとするのか。なぜこんなにもイライラするのか。
二人が一緒にいるのは、なんら不思議じゃない。韓国戦、イギリス戦から司令塔としてチームをまとめている。
たったそれだけ。当然の事をしているだけ。それだけなのに、妙にイライラする。

最近まで、ただ意地の悪い、嫌味な奴だとしか思っていなかった奴を、違う感情で見ている自分がいる。
認めたくない…。けど、俺は理性より本能で動くタイプらしくて、気が付けばいつも、目線に入る不動がいる。

「なんなんだ…」

今まであまり不動の事を気にしなかった。むしろ関わりたくないとさえ思っていた。


「けど、なにかが違う…」

「なにがだよ?」


一瞬にして思考が止まったのは言わずもがな。円堂がすぐ後ろに立っていた。


「円堂か…イキナリ人の思考に入って来られると驚きが半端じゃないんだが…」

「まぁいいじゃないか!で、何が違うんだ?」


円堂に聞いて分かるとは思えない。自分に向けられてる好意も気付かないような奴だからな。


「なんでも無い。少しシュート技について考えてただけだ」

「シュート技の話なら相談のるぜ!練習だっていくらでも付き合うからな!」

「ありがとう円堂。だけど今回は、少し自分で考えてみたいんだ。
考えがまとまったら相談するかもしれない。その時は頼む」

「オゥ!任せとけ!」


やっぱり円堂は凄い。さっきよりも気分が楽になった。内容は全く違うが、円堂と話すと少しでも荷が降りる。
むしろ楽しいと感じる時も少なくない。
不動を見ててもイライラして、苦しくて、頭の中ゴチャゴチャになって…良いことなんか一つもない。
それに引き換え、円堂はイライラしないし、苦しくもならない。


「なんでなんだ…」

「だぁーかーらー、話聞くって!」

「あぁ、気にしないでくれ。自分でもまだまだなんだ」

「うーん…まぁなんかあったら言えよ?」

「ありがとう」


遠ざかる優しい背中。


「どうしてお前を好きにならなかったんだろうな…」


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