「君は待機だ」
「何でですか」
「日頃の行いが悪いから」
「うっそでしょ!?私めっちゃ役に立ってるじゃないですか!この間の件もう忘れたんですか?降谷さんの頭どうなってるんで」
「お前なんてこと!」
風見さんに口を塞がれながらもふがふがとその下で文句を言う私を降谷さんは呆れて睨む。
「組織…ジンが関わると君は無茶をするからな。そんな奴連れて行けるか」
「降谷さんが言います?」
「俺が言わずに誰が言う」
べしっと強めのデコピンを食らう。めちゃくちゃ痛い。額とはいえ女性の顔面になんてことするんだこの上司は。その辺の女性より可愛いからってこの野郎。
「だってジンですよ?」
額を押さえ、涙目になりながら睨み返す。
「秀一さんが!コイビトだなんて言うジンですよ!?」
「宿敵と書け」
「恋人は!私だ!」
「それがわかってるなら大人しくしていろ」
ぐっと顎を取られる。
「じゃなきゃその口塞いでやろう」
触れそうな距離で囁く。ああこの男はこうやって女を弄ぶのか。嫌な男。
「それで参加できるならキスくらいどってこと」
「それは困るな」
今度は腰を取られ、ぐいっと後ろに引っ張られる。チッと降谷さんの舌打ちが聞こえ、鼻先にはよく知った煙草の匂い。
「秀一さん、」
「彼の言うように大人しくしていろ。君の唇をそんなことで他の男に奪われるわけにはいかんからな」
「でも」
言いかけた言葉は唇ごと秀一さんに食われる。待って、上司と同僚の前だ。逃れようにも力で敵うわけもなく、彼の舌は私の舌を弄んで離さない。長いキスだった。
「っ、は」
唇が離れる頃には、酸欠のように私はくらくらとしてしまって、そっと側の椅子に座らされる。
「…悪い男」
彼の服の裾を掴む手からも力が抜けていく。薬を盛られた。
「お仕置きは戻ってから受けよう」
余裕の顔だ。私の惚れた男。
「見せつけてくれるな」
「彼女を黙らせる役は譲らんよ」
「フン。精々役に立ってくれよ」
ああ、くそ。私だって、現場で役に立ちたい。意識が朦朧としていく。ここまですることかよ。薄目になりながら睨む私を、秀一さんは優しく眺めて、そっと私の頬を撫でた。
「待っていてくれ。それが君の任務だ」
「かならず、かえってきて、」
「もちろん」
彼はそう私の額にキスをして、微笑んだ。それを確認して、私は意識を手放した。







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