「なんだ、あなたもあの方を知らないのね」
表では、ジンに近づくこととあの方に近づくことは限りなく同一に思われているのに。
「あなたほど熱心な信仰者にひどい仕打ち」
「…お前は」
静かな声だ。
「神や仏を見たことがあるか?」
ああ、なんて健気な男だろうか。
「日本じゃあらゆるものが神さまなのよねえ」
わざと呆けてみせる。この目で見えぬものこの手で触れられぬものになど、私は興味がないのだ。
「残念だけど、信じるものが違うわ」
目の前の彼は手を伸ばせば触れられるのに、彼は手の届かない見えないものだけを抱えていて、そんな信心消えてしまえばいい。









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