久しぶりに休みを頂いた私は、幼い時によく食べていたきのみパイを買いに隣の国へ来ていた。 使用人の服でも、家で着るような豪華なドレスでもない庶民的な服。 淡い若葉の服が、実は持っている服の中で一番お気に入りだったりする。 洋菓子屋へ行く途中、ショーウインドに飾られた一着の服に目が惹かれた。 黄色の少し長めの上着は胸元が紐で結んであって、短い袖の下は黒の長袖。 腰にはベルト、膝くらいまでの黒いズボンには少しスリットが入っている。 一目見た瞬間あの人に似合うと、そう確信した。 ブランド物らしく、ショーウインドには「Ruby Brand」と彫られていた。 でもこんな庶民的な服をあの人に贈れるわけがない。 あの人は喜んでくれるだろうが、まず着ることを許されない。 あの人にはドレスが似合うと自分でも思う、が……こういう服も… いや、あの人は私なんかとは違う。 高貴な方だから…
私はその店を後にする。 もう目的のパイも買った、早く帰ろう。 ナナミお姉様も王女様も好きだから喜んでくれるに違いない。 勿論お兄様の分もある。 じゃなきゃ拗ねてしまうもの。 帰る途中広場に人だかりが出来ていることに気が付く。 近付くにつれて、見えてくる看板に「ポケモンバトル大会」と書かれていた。 少し高いステージの上で、ニドリーノとピカチュウが戦っている。 大会などは各地で行われているから、別に不思議でも何でもない。 ……が、ピカチュウのトレーナーに私は目を見開く。 なぜあの方がここにいる? ここは緑の国で、彼の国は海の向こうの青い国だというのに。 きっと気のせいよ、だって数ヶ月前に会ったばかりで見覚えがあるけど。 ステージの側に、やはり見えた彼女の姿。 人波をかき分け彼女の名前を少し大きな声で呼んだ。
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