「おめでとうございますイエロー様」
「もう十四歳になられるのね」
「レッド様とのご結婚も、後少しですこと」
「王女様が即位して女王となられる日が待ち遠しいですわ」
王女様に一日中かかる賛辞は全て貴族の人ばかり。 元よりここには何かしら肩書きを持つような人しかいないのだけれども。 王女様は向こうで婚約者のレッド様と楽しそうに笑っていなさる。 本当によくお似合いだと思う。 レッド様は意志が強い……というより芯が通っていると言いますか… そんな方だからこそ、王女様を引っ張って導き、共に支え合うことができるでしょう。 多分誰もが望んでいる、勿論私も。 王女様の幸せが私の幸せなのだから。
(本当に?)(そんな体の良いことを考えて本音は隠してばかり)
「あ、レモン!こっち」
「お久しぶりですレッド様、この度は王女様のご生誕祭に足を運んでいただき感謝しております」
「相変わらず堅苦しいよなーレモンは、もっと楽にしたらいいじゃん」
「そんな訳にはまいりません。私は使用人ですから」
「そんなの気にしないのに」
「お心遣いだけ受け取っておきます」
そうだ、間違っても私はレッド様に心を許してはいけない。 私が考え心に留めることは、王女様のこと一つ。 私の全てであり、存在する意味でもある。 これ以上二人の邪魔をしてはいけないと、早々にその場を離れた。 少し離れたテーブルに兄様と、レッド様付きの侍女であるブルーさんの姿が見えたので、そちらへ行った。
「こんにちは兄様、ブルーさんお久しぶりです」
「レモンか」
「久しぶり。また可愛くなったんじゃない?レモンってば。 若いっていいわねえ」
「何を言ってるんですか、まだまだブルーさんも若いじゃないですか。 そもそも、歳もそんなに離れてませんし」
「あーもう!レモンが私の妹だったら良かったのに」
「言っとくがレモンは誰にもやらんからな」
「何よ、このシスコン」
「うるさい」
「……どうしたの?王女様のことが気になるのかしら」
「…えっ」
「だってずっと見てるじゃない。それとも……レッドのことだったりして」
「な、違います!!」
「隠さなくてもいいのよ。本当に可愛いわねぇ」
「違い、ます……私はレッド様のことなんて…」
「――二人揃って馬鹿ね」
「え?」
「何でもない!ほらグリーン、迎賓の相手くらいしなさいよね」
「…あくまでお前は、」
「レディの誘いを断るんじゃないものよ」
「はあ、うるさい女だ」
「ほらほらレモンも!」
「――はい、ブルーさんには適いませんね」
それから少しの間だけ、お二人の会話に入らせていただき、仕事に戻った。 二人とお話していると、あんなに気になっていたお二人のことはいつの間にか忘れていた。 ……気を、遣ってくれたんだなぁと思う。 その優しさに少し救われた気がした。
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