今日で王女様が十四歳になられるため、夜から生誕祭と称してパーティーが行われる。 王女様は朝から嬉しそうにされていた。 なぜならパーティーには海の向こうの、青の国の王子レッド様も参加されるからだ。 そしてレッド様は王女様の婚約者でもある。 幼い頃、よく王女様のお相手をされていた、とても優しくて勇敢な方です。 勇敢というのは、レッド様が青の国で一番のポケモン使いだから。 手持ちのフシギダネ、ピカチュウ、ニョロボンに勝てる人はいない。 王女様もピカチュウをお持ちですが、彼女は傷付くのを恐れてバトルはしない。 私にもピチューがいるけど、家族同然だからバトルをさせたくないので王女様の気持ちがよく分かる。
…ああいけない、今は夜に向けて準備で忙しかったんだった。 掃除の手伝いと、それから後で王女様のお召し替えをしなければ……ああ、ニャースの手も借りたい、いやむしろ欲しいくらい。 長い廊下を小走りすると、ヒールの音が僅かに響く。 パーティー会場の華の間へ向かっていると、グリーン兄様とすれ違った。
「ようレモン」
「兄様、お久しぶりです」
「最近家に帰って来ないな、姉さんが寂しがってた」
「本当ですか?ならまた近々顔を見せに伺います」
「用事なくても来いよ」
「……はい、ありがとうございます」
本当ならもっとゆっくりと話したいところだけど、生憎今日は余裕がない。 簡単なやりとりだけして、その場をあとにした。 グリーン兄様は私の養子先の長男で、あのレッド様と張り合える実力を持つポケモン使いである。 何年か前くらいまでお世話になっていたけど、今は屋敷を出て住み込みで働いている。 グリーン兄様は王女様の家庭教師なので、会おうと思えば会えるけどナナミ姉様とは全く会っていない。 ……今度顔を出さないと怒られる、確実に。 お姉様のことだから、きっと元気なんだろうけど。
ああ、王女様におやつのブリオッシュを持っていかなければ。 どこか遠くで三時を告げる鐘の音がした。
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