一方レモンは困惑しすぎて、頭の中が真っ白になる。
思わず自分の耳を疑いたくなったが、目の前にいる彼の人は真っ直ぐにこちらを見ているので、思わず閉口してしまう。
だってレッド様はイエローが好きなんじゃないの…?
うそですよね、そんな冗談笑えませんよ?
それとも私の気持ちを知っていてからかっているんですか。
いくらレッド様でもさすがに怒りますよ。
ほら、だから早くうそだと言って笑ってください。
私はレモンで、イエローじゃないんです。


「……御冗談もほどほどにしてください。
いくら公務が苦だからと言って、そんな現実逃避…あなたらしくありませんよ」

「冗談なんかじゃ、ない!
オレはずっとずっとレモンが好きだった!!好きなんだ!」

「うそ、です…だってイエローが好きなんでしょう?」

「確かにイエローは好きだけど、それは妹みたいな感覚の好きだ。
レモンに対する感情とは違う」

「だ、だめです…あなたは国を背負う立場の人です。
もっとそれを自覚してください。第一身分が違いすぎます…」

「それについては問題ない。
これは自分なりに考えて行動した結果だ。
…なあ、お願いだから返事だけでもくれないか?
身分なんて関係ない、もし好きじゃないなら、それでもいい。
ただレモンの気持ちを聞かせてほしいんだ」

「わ、たしは――…」


自分の気持ちを素直に伝えていいものか…
もし伝えて、でもレッド様の両親…海の国の国王に反対されたら?
きっと彼は自分の立場を捨ててでも、私と一緒にいてくれるんだろう。
彼はそういう性格の方だから。
嫌ではない。……むしろこれ以上ないくらい嬉しい。
国のことを考えたら断った方がいいに決まっている。
感情を隠すのは得意、これまで何年も自分を隠し、偽ってきたのだから。
ほら、たった一言でいい。「ごめんさい」と…
言うだけ、なの、に……
レッド様のまっすぐな瞳に刺されたような感覚を持った。


「…私も、私も好きです……」


ついに言ってしまった。
いけないことは分かっている。
レッド様の瞳に負けたのは私の方。
こんなに真剣な人に嘘なんてつけない。
レッド様と同じ想いと分かって嬉しく思う自分も事実なのだから。

ここで暮らすようになってから、時たま姿を見せるようになったレッド様を、密かに次はいつ来るんだろうと待ち望んでいた。
私に話しかけてくれるのが、とても嬉しくて仕方なかった。
イエローよりも、私を見て欲しかった。
これまでひたすら隠してきた想いが胸から零れる。

レッド様が好き
私には何もない
イエローばかり
私だって…
双子なのに、
どうしてイエローが
遠くで見ているだけは嫌
私だけを 見 て …

口に出すのもおぞましいほどの恐ろしい欲望。
誰にも知られたくなくて、必死に胸の内に留めた。
ありのままの、私。
こんな醜い私なんて消えてしまいたい。
レッド様だけには知られたくない。



「オレはレモンのことをもっと知りたい」
こんな浅ましい私にレッド様は以前こう言って下さった。

「聞かせて、小さい頃一緒に育ったときのことを」
幼く浅薄だった私をイエローは知りたいと言った。

もう私は1人じゃない。
いや、兄様や姉様それに命の恩人であるおじい様もいたけど……約束を果たすために孤独を呑みこみ、1人で背負いこもうとした私は孤独だと思っていた。
過去の私は幼かったレモン・デ・トキワグローブだった。
今の私はレモン・ユキナリ。王女ではない、ただのシスターで何に縛られることもない。
……けれど少しくらい、自分に正直でいてもいいよね、イエロー


「私もずっと…ずっと好きでした」

「はは…なんか都合のいい夢を見てるみたいだ。
……イエローに感謝しないとな。
チャンスをくれたんだから」

「イエローが?」

「ああ、一つは婚約の解消。
もう一つは…これはオレしか知らないことなんだけど……レモンに王位を再び与えること」

「――そんなの聞いてません」

「うん、だって黄の国でも一部の人間にしか知らされてないって、手紙に書いてたからな」

「いつの間に…」

「イエローなりにレモンのことを気遣ったんだよ」

「もう…そんな大事なことを黙っているなんて」

「これは最後のチャンスだったんだ。
イエローがくれた最初で最後のプレゼント」

「最後の、チャンス?」

「…オレは外交手段を理由にレモンと婚約してでも振り向かせるつもりだったし。
……それもレモンが本気で嫌がったら行動には移せなかっただろうけど。
こんなオレのこと、どう思う?…やっぱり嫌なやつだよな」

「!そんなことないです!わ、私だって…」

「……レモン」

「私だって、イエローを憎いと思ったことは一時期ありましたし。
あ、会うたびに私だけを見てほしいって……」

「……こんなときに不謹慎だけど…ヤバい、すごい嬉しい」

「もうっ!レッド様!!笑わないでください!私とても恥ずかしいんですよ!?」

「ごめんごめん、でもホントに嬉しいんだ。レモンがそうやってオレのこと考えてくれてたなんて。
――…改めて申し上げます、私とお付き合いしていただけないでしょうか?レモン・デ・トキワグローブ王女」

「……謹んでお受けいたします、レッド王子」




Thank for 20000hit!

ありがとうございました!



オチが浮かばなかっただけだろとか言わないでw
その通りですすいませんんん!!

このあと子供に囲まれてたのを思い出して、二人で赤面すればいい\(^O^)/