「イエロー、レモン!」

「レッドさん!」

「良かったな!どうなることかと心配したけど。これから頑張らなきゃな」

「はい、ありがとうございますレッド様」

「ってまだ様付けかよ。敬語とかいいって前々から言ってるだろ」

「いえ。レッド様は青の国の王子ですから」

「またそれを言う……なんか前にも同じやりとりをしたような…」

「えっ?いつのまにボクの知らないところで」

「覚えていらっしゃらないなら結構です」

「ちょっ、拗ねるなってレモン」

「拗ねてなんかいません。それよりも早くお帰りにならないといけないのでは?」

「大丈夫だって!……多分」

「ブルーさんに怒られても知りませんから」

「そんなこと言うなよ……」

「ねえ、早くお城に戻ろうよレモン。やりたいことがあるんだ」

「イエローが珍しいね、そんなことあった?」

「あるよ!”双子は災いの凶兆ではない”って国に広めないとね」

「!」

「……もう大丈夫そうだし、オレも帰るかな」

「レッドさん帰るんですか?」

「まあ公務そっちのけで飛び出してきちゃったし、いい加減戻らないとブルーの雷が落ちそうだしさ」

「そうですか……今度レッドさんが来たときには黄の国をもっと豊かにしてみせます」

「うん、楽しみにしてる」

「……」

「…じゃあ、な。イエロー、レモン」

「はいまた今度ですね。……レモン?どうしたの?レッドさん行っちゃうよ」

「え、あ…はい。さようならレッド様」

「(レモン…?)」


曖昧な別れのあいさつにレッドは眉をひそめながらも、これ以上留まるわけにはいかないので、影を引いてその場をあとにする。
別にこれが最後の別れでもない。
また次に会える機会があるだろう、その時に理由でも訊いたらいいと思って。
疑問に思ったのはイエローも同じで、二人きりになったときに理由を訊いてみた。
一瞬ためらってからレモンはその訳をポツリと呟いた。

「次、レッド様にどんな顔をして会えばいいのかなって」

「?、それだけ?」

「私にとっては大切なことだよ。今まで使用人だったのにどう接したらいいか分からないし、これまで通り振舞おうとしたら、レッド様がそれを嫌がるし」

「うーん…多分レッドさんは違う意味で言ったんだと思うけど」

「じゃあどういう意味?」

「(それをボクが言っていいのかな…)きっとレッドさんはレモンと同じ立場に立ちたいんだよ」

「同じ立場って……王家として?」

「違うって。なんていうのかな……同じ目線で対等にいたい?って感じかな」

「……よくわかんない」

「(ああ、鈍いなあこの子は…)」


第三者である自分から見ても明白であるそれに気付かないレモンは鈍感過ぎると苦笑を洩らす。
そんなイエローを見てレモンは不快そうにするだけだが。
もっと不憫なのはレッドの方だと、さっき心あらずの状態で別れの言葉を告げられて肩を落として帰るレッドの背中を見て思った。
レッドはあからさまにレモンを意識していると、すぐに分かる。
レモンもレッドに少なからず好意があると思う。
でも彼女がそれを表に出さないのは、立場や自分の婚約者だから遠慮しているのだと。
確かに婚約者ではあるが、自分にとってレッドは兄のような存在であるし、彼もイエローのことを妹感覚で見ているはずだ。
でなければレモンに恋をするわけがない。
二人が両想いであると知って、自分もブルーといった他の人間もそれを祝福しているというのに。
ただグリーンだけは渋るかもしれない、義妹が可愛くて仕方ないのだから。

この調子だとしばらくはギクシャクする関係になるだろう。
でも、いつか二人の想いが通じるまで、自分がレモンを独占したっていいだろう?
イエローにとってもレモンは大切な人で、唯一の妹なのだから。






There will be it together all the time


これから先、二人が同じ道を歩まんことを――…








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