今までにないくらい清々しい朝を迎えた。 隣で未だ夢の中にいるイエローが微笑ましくて、顔にかかる髪を避けてあげた。 ……とても可愛い私の姉妹、何に変えても守りたかった。 どうなってもいい私という存在より、この子はみんなに必要とされている。 この国にとって、イエローは必要不可欠な存在。 誰よりも国を愛し、国民を想う優しい人。 これまで生きてきて良かったのかと問い掛けてきたけど、妹であることだけは誇らしく思う。 行く末はレッド様と共に歩んでいくのだろう、そう思ってた。
「んっ…」
「おはようイエロー」
「……おはよう、レモン起きるの早くない?」
「私は習慣が身についているからね」
「でもまだ六時だよ」
「これでも寝坊した方だけどな」
「……ボクも頑張らなきゃ」
「イエローは早く起きる必要がないと思うよ」
「ダメだって、ボクを甘やかさないでレモンってば」
「ごめん。今までの癖でつい…」
「あ……ボクも言い過ぎちゃった……でもこれからは対等な立場でいたい。 だってボクらは双子でしょ?」
「……うん」
手を重ねられてそっと握り返す。 その温かさと優しさは今まで私が知らなかったもので。 こみあげる涙を必死に隠す。 無言で支度をしたあと、革命軍の人に先導されて再び広場に立った。 今からどうなるか想像もつかない。 でも、例え処刑されるとしても私はもう怖くない。 隣にいる存在が心強く、レモンとしての私を留めてくれる。 ――…もう一人じゃない。
「……昨日みんなで話し合いました。 私たちは王女を処刑するつもりでした。 でも、隠されていた真実を知って、もう一度これで正しいのか検討しました。…結果……」
一度言葉を切ると、クリスタルさんは私たち二人を見る。 昨日までの怒気や困惑はない、まっすぐ意志を感じる瞳。 ギロチンが置かれていた台は何もなく、私たち二人とクリスタルさんの三人だけ。 正面の斜め前にいたレッド様がじっとこちらを見ていた。 心配そうに、けれど真っ直ぐ向けられる黒い瞳。 まるで呑み込まれそうな気分になる。 無性に恥ずかしくなって視線をつい、と外して逃げる。 拒否されたら、もう私に生きるすべはない。 思わずイエローと繋がっている手に力がこもる。 大丈夫、というようにイエローも握り返してくれた。
「確かに今まで行われた政治は私利私欲のものでした。 王女が自分勝手にふるまっていたというなら、私たちの怒りは誰にも止めることは出来ないでしょう。 でも、もし王女に悔やむ感情があって、この黄の国を愛しているというのなら――…
私たちはもう一度だけ、あなたを信じてみたいと思います」
「!!」
「イエロー王女はこれからは道を違えることはないはずです。 だって、一人ではありませんから」
「クリスタル、さん……」
「それじゃあ…」
「今度こそこの黄の国がより良い国になる為に、私たち国民はそれを望んでいます」
瞬間広場が歓声に呑み込まれた。 繋がれていた手錠からも解放されて本当に自由になる。 ひとしきり見まわしてからクリスタルさんと向き合った。 彼女は無言で手を出す、その表情は笑顔だった。
「もう同じ過ちは二度と犯さないと、誓えますか?イエロー王女」
「もちろんです。これまでの悪政は…私の不甲斐なさから招いたこと。 これからはレモンと二人で頑張ります。ね?」
「……でも、私はもう王位を剥奪されているのに…」
「そんなこと関係ない。ボクはレモンが傍にいてくれたらいいんだよ」
「そうです。これまで食料を配ってくれたじゃないですか。 そんなレモンさんなら、二人でこの国を支えてくれると信じています」
「……クリスタルさん」
「顔をあげてくださいレモン王女。 みんなが新しい国の始まりを祝っています」
「レモン、ボクたちが双子なのは二人で分かち合うために産まれてきたんだって思うんだ」
「……イエロー、クリスタルさん。 ――うん、これから二人で頑張ろうね」
「一緒ならきっと大丈夫」
「私もだよ、イエロー」
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