話が区切れたのを見計らって、革命軍の誰かが私を迎えに来た。
もちろんイエローも一緒。
レッド様も別の人に案内されて、私達と別の所に通されるようだ。
私とイエローはお城のある部屋に入れられ、呼ぶまで待てと言われた。
偶然だろうが、その部屋は私の使っていた部屋。
今は使用人の仮眠室になっていて、私が使っていた家具はあの頃より少ない。
その家具の行き先は、イエローの部屋なんだけれど。
何度か仮眠はとったことがあるけれど、懐かしく感じるのは隣にいる存在から?

繋がる手が温かい。
部屋がオレンジ一色に染まって、とても美しい。
イエローは物珍しそうに部屋を見渡していた。


「こんな部屋があったんだね」

「ここは使用人が使う仮眠室。
元々は私の部屋だったんだけど……使わなくなったから」

「そうだっけ…?」

「あまり人目につかないよう離れたところにあるでしょ?
軟禁に近かった生活の、唯一の光がイエローだったんだよ…?」

「大げさじゃない?」

「ううん、本当に。
友達もいない、限られた使用人以外と会うことも出来ないし、城の外に出ることを禁じられて。
それでも私が腐らなかったのは、イエローがいてくれたからなんだよ。
イエローは約束してくれた、ずっと一緒にいて遊んであげるって。
だから私も、側にいるって誓ったの」

「それなのに、ボクはそんな大切なことを覚えてないんだね…」

「……それは仕方ないよ。
双子で、王家に遺伝する能力を受け継いだイエロー。
情けで居る、ただの忌み子でしかない私……繋がりを断ち切りたかったんだと思う」

「そんな、」

「私は物心ついたときから、自分がどういう存在なのか、何となく分かっていたから」

決心はついていた。
幼い頃から気づいていたという事実にイエローは頭を垂れる。
それがどれだけ悲しく、残酷なことであるか。
自分だってまだ幼いけど、それが子供の内に知ることではないこと。
彼女がどんな扱いをされていたのかを暗に示していた。


「レモンは、ボクが憎いと思ったんじゃないの…?」


おそるおそる聞いてきたイエローに、私は微笑んだ。
見上げた天井が懐かしい。
子供の頃に戻ったみたいな気分になる。


「…全く憎くなかったといえば嘘になる。
でも何よりも、誰よりもイエローのことが好きだから……そんなこと、できないよ」

「レモン……」


そう、不思議と憎いなどと考えたことは一度もなかった。
理不尽さは身に染みていたけど、双子で、しかもイエローが王位継承に必要な力を持っているならどうしようもない。
王家に伝わる、癒す力――…この国の跡目として相応しい能力。
私は選ばれなかった……ただそれだけ。
自分がどうなるか、なんとなく予想がついていた…けど。
この先、明日はどうなるか分からない。
私たちは民衆の想いに負けた。
いずれにしろトキワの血はここで絶える運命かもしれない。
また処刑台に向かうのは怖いけど……今度は一人じゃない。


「やっぱり双子なんだね…」

「何か言った?」

「ううん何も」


どれだけ必死に隠しても、拭えなかった死の恐怖。
罵倒する民衆……これほど人前に立つことが恐ろしかったことはない。
だけど不思議。
イエローと一緒にいるだけで不安や恐怖が全部消えてしまった。
やっぱり私たちは双子なんだね。
隣にいるだけで安心できる。
イエローと一緒なら何だって出来る気がするから。
強がってもやっぱり一人にはなれなかった。


「今度は約束を守るよ」

「!、うん!ボクも覚えていないけど、ずっと側にいる」


予測不能の明日に怯えることなく、私たちは寄り添って眠りに落ちた。







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