「イエロー、レッド様!!」
ああなぜここにいるの! 青の国にいるんだと思ってた。 ダメよイエロー、正体がバレたら捕まってしまうわ。 それにレッド様も。 他国の、それも王子がこんな場所にいたら危ないというのに。 私は動揺を隠しながら、二人に聞こえる声で話し掛けた。
「……あら誰かしら。 邪魔しようだなんて不粋な真似をするのは」
「ボクはあなたを助けに来たんだ」
イエローの発言で、民衆はどよめく。 まずい……こんな所で王女様の味方なんてしたら、イエローは捕まってしまう。 そしたら私が偽者だとバレかねない。 何よりせっかく身代わりになったのに。 私はそれを望まない!
「私を助ける?……物好きもいたものね。 私は黄の国のイエロー! 誰かに助けを請うなどせぬ。 正体の知れぬあなたたちに助けられるほど、私は落ちぶれてはいないわ。 さあ立ち去るがよい!」
「そんなことできないよ。 ……ボクは誰かを犠牲にするなんて嫌なんだ」
「(今ここで名乗れば捕まってしまう…お願いイエロー…言わないで……!」
「……そこにいる王女は本物じゃありません」
「!?」
「嘘つくな!」 「王女はここいるだろ」 「てめーは黙ってろ!」
「彼女はただの使用人です。 本物の王女は――…ボクだ!」
途端に騒めく民衆。 一体どうなってるんだ、と。 彼らは本物の王女を見たことがないため、判断が出来ない。 王女だと思って処刑しようとした瞬間、本物だと名乗る少女が現れてみんな混乱した。 その間に二人は少しずつ、中央の処刑台を歩み寄っていく。 徐々に近付いてくるイエローに、レモンは顔を青ざめた。
「クリスタルさんよく見て下さい、王女の顔に見覚えがありませんか」
「なぜあなたが私の名前を…」
「ボクは彼女から、よくあなたの話を聞いていました。 みんなを思いやる優しい人だと……」
クリスタルは屈んで、苦悶の表情を浮かべる王女をまじまじと見つめた。 整った少し幼い顔立ち。 女性というより、少女………? 今自分で考えたフレーズに覚えがあった。 そう……あれは城下町で、食糧を配布してくれた名前も知らない人……!
「あなたは…っ!?」
「そうです、ボクのお願いで城下町に食糧を配ってもらいました。 ボクは外に出ることができなかったから、代行してもらったんです」
「てっきり貴族の誰かかと……それにしても」
クリスタルは謎の少女と王女を何回も見比べた。 二人は主従関係だけなはず。 なのに見れば見るほど似ている二人。 並んだら分からない――…相違点は髪型が違うくらいか。
「ごめんレモン、グリーンさんから聞いたんだ。 ――ボクとレモンは双子だって」
「!」
「双子?」
「……そう聞いたの。 …なら隠しても意味がない、か……。 そうよ、私たちは双子だった。 …このままうまくいけば、イエローは助かったのに!どうしてっ!」
「いやだ!ボクは何も知らない、知ることを許されないから知ろうとしなかった。 だから貴族院の言いなりになってしまった。 今目の前で起きていることは、ボクの業が招いてしまったこと。 受け入れる覚悟はできてる。 …でもこれだけは分かるよ、レモンを身代わりになんて出来ない」
「…私はそれでよかったのに……イエローが笑顔でいられるなら私は死んでも構わなかった!!」
「バカ!レモンのバカッ! レモンを犠牲にしてまで生きようとは思ってないし、レモンのいない世界で笑える自信なんかボクにはないんだ…っ!!」
「私の生きる意味なんて……」
「レモン、それは違う。 誰かの犠牲の上で成り立つ世界なんて駄目だ。 たとえレモンがイエローの為に死をいとわないとしても、イエローはそんなこと望んでないし、オレもレモンに生きていてほしい。 レモンは死んじゃいけない」
「…あの、状況がよく分からないんですけど。 王女とこの人が双子って…?」
「それならオレが説明する」
「あなたは?」
「青の国のレッド」
「!、あなたが名高いレッド王子……まさかお目にかかるなんて」
「別に姿を隠してるってわけじゃないんだけどな。 ……イエローとレモンのことだけど、」
そして彼は真実を語る。
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