お話は少し昔に遡ります。


むかしむかしある国に、双子の王女様がいました。
金色の綺麗な髪を持つ同じ容姿の王女様たち。
しかしその国では双子は“災厄の凶兆”といわれ、忌み嫌われていました。
本来なら双子が産まれた家は赤子の時に引き離すのですが、双子の王女様たちは王家の血を引いています。
もし片方が何らかの理由でいなくなった場合、後継者がいなくなってしまうという理由で、王女様たちは一緒にいることができました。
でも双子の妹姫は、表に出ることを許されませんでした。
姉姫が王家に伝わる、不思議な力の持ち主ということもあって、妹姫は公に王女様だと公表されませんでした。
この事実は王女様たちに知らされていませんでしたが、妹姫だけは何となく気付いていたようです。
だから、姉と一緒に過ごせる毎日が尊いものだと知ることができたのです。


しかし王女様たちの年齢が十に満たない時に、国に未知の疫病が流行りました。
疫病にかかってお妃様は亡くなりました。
姉姫もかかって生死を彷徨いましたが、疫病の抗体薬を開発したのはオーキド博士でした。
ポケモンの博士号を持つ人は皆、生態系を学んでいます。
人も、ポケモンも、どちらも生態学を学ぶことが当たり前でした。
それにオーキド博士は各国を渡っていたので、知識が豊富です。
国に蔓延した疫病は、終わりを告げました。
しかし、「双子は災厄だった」という国王の最後の言葉で、双子の姉妹は引き離されることになったのです。
姉は正式な王位継承者として、妹は外交の材料として。
姉姫は宮廷魔導師ナツメによって、記憶を改竄され、妹との思い出を忘れる事となったのです。



一方妹姫は、恩師の計らいにより、養子として引き取られました。
姉のように記憶を消されることはありませんでしたが、王女である自分は死んでしまったのです。
新しい兄と姉はとても優しくしてくれました。
それでも、姉の側にいたくて数年後のある日……兄に告げました。


「私は使用人になりたいです。
…王女様の、側に……」


彼女は王女付きの使用人になりました。
自分を忘れている、姉との約束を果たすために。
記憶はなくとも、姉姫は一人の使用人に自分でも分からない親近感を抱きました。
そうして数年が経ちました。


王女の悪逆非道ぶりについに人々は立ち上がって、武器を取り、刃を向けます。
皮肉なことに革命のリーダーは、使用人である彼女のよく知っている人物。
緑の国に送った兵士を今、呼び戻しています、が……
警備が手薄な中、いずれ城内に攻め込まれることを悟った彼女は王女に提案をしました。


「私と服を取り替えては頂けませんか」










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