「イエローだめ、私は人と会っちゃいけないって知ってるでしょう」
「レッドさんはそんな人じゃないもん。 ボクだってレモンが大切だから、紹介したかったんだ。 レモンでも同じことをするでしょ」
「……もう。お父様には内緒だからね」
「…うん!」
「あの、ちょっと」
オレ忘れられてない?空気みたいで寂しいんだけど。 そしたらレモンっていう子が「ごめんなさい」と謝って笑う。 さっきまでの張り詰めた表情とは違う、印象的な笑顔に思わず見惚れる。 イエローと同じ金糸の髪が太陽の光で輝いてキレイだった。 こんな風に笑う人は初めて見たんだ。 ブルーは言うならニヤリ、だしイエローはほんわかしてるけど、レモンは花が咲いたみたいだった。 多分その時オレは一目惚れしたんだ。
二人と一緒に遊ぶのはとても楽しかった。 今までで一番かもしれない。 幼なじみのブルーがいたけど、あいつは弟を構ってばっかりだったし。 別に一人でもオレには、ピカとフッシーがいた。 オレは孤独を知らなかった、いや今でも知らないだろう。 オレの周りには色んな人がいたからな。 話がズレた、そのあとオレは一緒に来たお付きの人に呼ばれて、帰らなくては行けなかった。 せっかく友達ができたのに…… 駄々をこねるオレに、レモンは四つ葉のクローバーを差し出した。
「私の宝物あげる。大切にしてね、王子さま」
「それ!ボクにはくれなかったのに」
「イエローはいいでしょ」
「やだやだ!ボクもなにか欲しい」
「……じゃあ、今度絵本を読んであげるから」
「…ホント?ボク、レモンが読んでくれるお話好きなんだ」
「ごめんな?イエロー」
「レモンにまた見つけてもらうから平気です」
「……オレ、もう行かなきゃ。 今日は楽しかったぜ、また来るから!」
「はい、また今度に」
「…さようなら」
その時彼女は「またね」じゃなくて「さようなら」と言ったんだ。 当時オレは気にも止めなかったけど、今なら分かる。 きっと彼女はもう会えないって理解してたんだ。 オレが次に黄の国を訪問したとき、彼女の姿はなかった。 イエローに聞いても「そんな子知りません」と、彼女のことすら覚えていないようだった。 まるで狐に化かされたみたいな……
もうオレはその時の記憶を曖昧にしか覚えてないし、名前すら分からない。 笑顔が可愛かったことを、ぼんやりと覚えているだけ。 彼女は一体どうしたんだろうか。 死んだのかな……今もどこかにいるのだろうか。 もしそうだったらもう一度会いたい。 約束を果たしたいんだ。 一緒に遊ぶって。
「……レモン?」
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