「はああー……今日も退屈だぜ、つまんねぇなあ」
今日も青の国は平和だ。 平和ゆえに毎日が不変、オレとしてはもうちょっと刺激が欲しい。 たまに目を盗んでサボっては、バトル大会とかには出場してるけどよぉ。 なんか事件でも起きてくれねぇかなあ……
なんて若干物騒なことを考えつつ、青の国の騎士ゴールドは城の外を警備していた。 ただ、退屈ゆえに暇潰しを求めては、自分の持ち場を離れてふらふらしているが。 城門に差し掛かった時、門前が騒がしいことに気付いたゴールドは、野次馬のごとく立ち寄った。 そこにいたのは、自分のライバル兼友達のシルバー。 そして、フードをかぶった何者か。 近付くにつれて聞こえてきた話によると、レッド王子に会わせてほしいらしい。 しかしシルバーがそれを許すはずもなく、門前払いをしていた。 なかなか進展しそうにない話し合いにゴールドは口を挟むことにした。 諦めずに懇願する彼女の足元にはピチューがいた。
「よっ、何してんだよ」
「ゴールドか……お前には関係ない話だ」
「んだよ、相変わらずつれねぇなあ! つか聞こえたぜ、王子に会わせてほしいってんだろ」
「……何度追い払っても聞かない、お前からも何か言ったらどうだ」
「別にいいじゃん」
「バカか貴様は!!」
「それにどっかで見たことあるような……」
「あら、どうしたの?」
「姉さん、」
「ブルーさん!こいつがレッド王子に会いたいって聞かないんスよ」
「ん…ちょっとあなた、…イエロー様じゃない?」
フードに隠れた顔を見ようとブルーが覗き込むと、見知ったその顔に目を丸くする。 名前を呼ばれたイエローはフードを外して、金色の髪を晒した。 ブルーが足元を見ると、そこにはイエローの手持ちじゃないピチューが一匹。 話だけなら聞いたことがある、多分このピチューはレモンの手持ち。 同時にイエロー一人でいる理由が気になって聞いてみた。
「ボクもそのことでレッドさんに話があるんです。 お願いです、会わせてくれませんか!?」
接客の間にて、イエローとレッドそれにブルーが向かい合って座っていた。 ゴールドもついていくと言ったが彼には仕事があるため、宥めて持ち場に戻ってもらった。 ついでにサボっていたのもバレた。 レッドが静かに、いきなり訪ねてきた理由を問い掛けた。 普通なら使者を通して、前もって知らされているところ。 するとイエローは、レッドの言葉を聞いて泣き始めた。 涙をポロポロ零すイエローにレッドは慌てる。 思わず「オレ変な事言ってないよな…?」と不安気にブルーに聞いたくらい。 やがて泣いてばかりではいけないと、イエローは少しずつ言葉を紡ぐ。
だんだん聞いているうちにレッドとブルーの表情が暗くなる。 掻い摘んで言えば、イエローの国で革命が起きた……ということらしい。 つまり彼女は逃げてきた。 だけどレッドには疑問点があった。 イエローのことだから、てっきりレモンも一緒だと思っていたのに彼女の姿はない。 以前聞いていた手持ちのピチューしか、ここにはいない。
「イエロー……レモンはどうしたんだ?」
「レモン、レモンは……ボクの身代わりになって残りました。 ボクとレモンはよく似ているから、きっと分からないよって」
「レモンが!?」
二人は思わず閉口する。 レモンのことだから先導を切って、イエローと一緒に逃げると想像していた。 確かに彼女ならば有り得ない事もないが…… 捕まったらどうなるか……分からない彼女ではあるまい。 イエローはそれだけ語ると、またさめざめと泣き出した。
レッドは無言で立ち上がると、そのまま部屋を出ようとした。 が、「待ちなさい」というブルーに足を止める。
「あなた分かってる? 同盟国とはいえ、他国の事情に顔を突っ込んでいいと思ってるの。 あなたは王子なんだから、もう少し思慮深い行動をしなさい」
「……」
「…多分もう遅いわ。 イエロー様の話じゃ、結構前に暴動が起きたみたいだし。 今頃城は占拠されてると…」
「オレはレモンが死ぬのをわざわざ見過ごせない。 イエローに頼まれたからじゃない、オレにだってレモンは大切な人だから。 ――好きなやつくらい自分で守りたいからさ!」
「!、レッドあなた…」
振り返ったその表情は王子である前に一人の男だった。 そのままブルーの言葉も聞かず、扉を開けた瞬間レッドは思わず止まった。 扉の前にいたのは、思いもよらない人物だった。
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