「はあ……」

「なあシルバー、最近レッド王子ため息多いと思わねえか？」

「…さあな、そうだとしても俺たちが気にかけることではない」

「だけどよー、現に執務に影響が出始めてるしさあ」

「…この間緑の国の大会に出場してからずっとああらしい。
姉さんが呟いていた」

「ああ、ブルーさんな。へえ…なんかあったのかな」

「俺が知るわけないだろ」

「じゃあ直接訊いてみようぜ！」

「おい！待て馬鹿っ！」


「レッド王子！なんか悩みでもあるんスか？」

「ゴールドにシルバーか？ああいや…何でもない」

「そんな風には、見えないっスけど」

「……なあ、あのさ一つ訊いていいか？」

「オレたちが答えられることなら」

「お前たちには好きな人っているのか」


オレはレッド王子の質問に驚いた。
内容のこともあるが、王子が悩んでいた理由にだ。
王子はそんなことを考える必要はないはず。
だって王子には黄の国のイエロー王女と婚約しているのだから。
いきなりそんなことを尋ねられて戸惑いながら返事を返す。


「オレは今そういうのには興味ないんで……もしかしてレッド王子、好きな人がいるんスか？」

「……」

「……王子、それは意味が分かっておいでですか」

「…ああ、痛いほど分かってるよシルバー」

「誰にも言わないんで！誰が好きなんスか？　
給仕のリリアンヌとか、もしかしてジョセフィーヌでしょう！？」

「…この馬鹿が」

「何だと？そっかお前はお姉さん一筋だもんなー、シスコンだし」

「オレはシスコンじゃない」

「どこをどう見てもそうだろ」

「喧嘩を売る気か……？」

「いいぜ、表に出ろよ。今日こそ決着つけてやる」

「そこまでだ二人とも、私用でポケモンバトルは禁止されてるって知ってるだろ。
仮にもこの城の騎士なんだから、そこは自覚してくれ」

「……すいません」
「…申し訳ありません」



「いや、オレも人のことが言えないかもな…」

「王子……」

「――お前たちだけだぞ？…オレ、好きな人がいるんだ」

「そんなことオレたちに言ってもいいですか？」

「お前たちだからさ。それにブルーには知られてるし。
でも好きな人はさっきゴールドが言った中に、というか給仕の中にはいないんだ」

「貴族のお嬢さんとか？」

「いや……この国ですらない」

「もしかして緑の国に…？」

「？、何で緑の国なんだ？」

「あ、いや…緑の国に行ってから王子が悩む事が多くなったようにお見受けしたので」

「……オレってそんなに出やすいのか？」

「……公務で隠せていたら、特に問題はないかと」

「ハッキリ言うなあ…シルバーは」

「じゃあレッド王子は緑の国の人が好きなんスね」

「あ、いや……」

「え、違うんスか？」

「……そういえばこの間緑の国に行った時、レモンという黄の国の侍女に会ったと姉さんから聞いたな」

「もしかしてその人だったりしてな」

「……ブルー、あいつ…！」

「…ままさか当たり、とかないっスよねえぇ…？」

「！ちが、」

「…レッド王子、それは許されないことですよ。立場が違い過ぎます。
侍女……ましてや黄の国の方を想われるなんて。
イエロー様がおられるというのに」

「恋に障害はつきものっスよ！
レッド王子なら大丈夫でしょ、何とかなりますって」

「無責任なことを言うなゴールド」

「んだよ？それにレモンは良い奴だから、王子とお似合いだろうがよ」

「……ん？ゴールドお前レモンのことを知っているのか？」

「前に緑の国で行われたパーティーにレッド王子の護衛で行ったときに会ったんスよ。
可愛くて好みだったんでよく覚えてます。
確かその時お前もいたよなシルバー」

「ああ……あいつがレモンなのか。
そういえばそう名乗ってたな」

「…ゴールドとシルバーはレモンと仲いいのか」

「そっすね、気が合うと思いますよ。ただ王女至上主義だったんで諦めましたけど」

「……」

「王子？」