vol.1
しとしとと、雨の音がする。
せっかくの休日なのに、朝から雨なんて。
いま何時だろうと思ってもぞもぞしていると、わたしを抱き締めたまま眠っていたロイも目が覚めたようで、頭の上でうーんと声がした。
「…起きたの?」
「うん、…」
寝てるな、これは。
びしっと決めた仕事中の姿も好きだけど、朝に弱いロイのこんな姿も好きだったりする。
こんな姿はわたし以外見られないんだから。
「今日、雨みたいだよ」
「そうか…出かけられないな」
晴れたらカフェのテラス席でランチを食べよう、なんて言っていたのを覚えてくれていたようだ。
「…あったかいな」
さらにぎゅーっと抱き締められて。腕の中にとらわれて。
「そろそろ、起きなくていいの?」
「…雨だから」
「そっか」
まだ寝ぼけているロイとぽつりぽつりそんな話をしていたらなんだかわたしもまた眠くなってきた。
「…今日はずっとこうしてたい」
「うん、わたしも」
「幸せだな」
「…うん」
相変わらず雨の音は続いていたけど。
二人で抱き合って、時間も気にせずずっとそうしていたら、それだけで満足で。
何もしてないのに、気持ちが満たされていく。
これが当たり前の日々になっている奇跡に感謝して、ありがとう、と小さく呟いた。
2020.3.13-6.30