はじめまして


「痛ってえええええ!!!」

オルオの大きな悲鳴が医務室にこだました。

「大したことないよ、君。大人しくしていたまえ」

医師がオルオをたしなめた。
なまえは苦笑しながら、当て木と、包帯を医師の傍らへ用意した。
彼女が調査兵団付きの医療班に配属されて、数年が経つ。
身体能力など兵士になりうる才に恵まれなかった彼女は、それでも何か公の役に立ちたいとの思いで、彼らを支える看護士を志した。


「リヴァイ兵士長」


なまえはオルオの容態を伝えようと、処置室の外でベンチに座り待機していた、彼の上官であるリヴァイに声を掛けた。
が、反応がない。

「・・・リヴァイ、兵士長?」

足を組み腕も組み、難しそうな表情で彼は座っている。
彼女はその顔を覗き込んだ。

(・・・寝てる)

彼は小さく寝息を立てながら静かに眠っていた。
細い眉の間にしわを寄せ、うっすら閉じられた瞼は端整に感じられた。

それにしても、少し背中を丸めて眠っている彼の、何と小柄なことだろう。
なまえは彼を知らないわけではなかった。
むしろ、随分前から知っていたし、こうして彼の部下に付き添いこの医務室に来ることもしばしばあった。
けれど、こんな風に彼に近付き、まじまじと彼を眺めたことはなかったのだ。

(・・・この人が、人類最強の兵士・・・)

しかも、なまえより年上であるはずだが、かなり若く見える。つまり、童顔だ。

彼が、調査兵団の、人類の希望を背に、誰よりも大きな使命を持って、戦っている人だ。
―――――その、小さな肩に。
なまえは不思議な気持ちになった。

なまえはその安らかな寝顔をしばらく見つめていると、リヴァイはぴくっと動き、ゆっくりとその瞳を開けた。

「・・・あ、お休みのところすみません、リヴァイ兵士長」
「・・・・・・オルオは」
「じきに手当てが終わります。1ヶ月くらいの安静かな。そんなに大したことはなさそうです。」
「そうか。なら良かった」

リヴァイはベンチから立ち上がった。

「部下を1人か2人、こちらへ寄越す。やつらにオルオを家まで送らせる」
「分かりました」

彼は窓の向こうに視線をやると、そのまま扉に向かい、医務室を後にした。





 
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