ジャンママとえるびんさんその1


*13巻限定DVD視聴後熟女好きえるびんさん妄想を拗らせた管理人によるジャンママとえるびんさんのお話です。頂きました消しゴムさんのお話が素敵すぎて書いたものです。消しゴムさんのお話の前部分を勝手に書かせて頂きました…^q^



「もう帰ってくれよ!ていうか帰れ!!」

兵士達が揃って昼食をとっている食堂に、ジャンの叫び声がこだまする。
顔を真っ赤にして慌てふためく思春期の息子にはお構い無しに、ジャンの母親はいそいそと息子の同僚たちにリンゴを配っていた。

「一体何の騒ぎだ」

遅れて食堂に現れたエルヴィンの横で、リヴァイが不機嫌そうに言った。
エルヴィンは面白そうに食堂の中を見回して、騒ぎの中心を見つけようとしている。
ジャンの母親はそこらじゅうにいる兵士にペコペコと頭を下げリンゴを渡しながら、ジャンがお世話になりますと1人1人に丁寧に挨拶を繰り返していた。
上官ならまだしも、104期生にまでそれをするからジャンはたまらない。

「――――だから、やめろって!!」

無理矢理制止しようとしたジャンの手が当たり、母親の手から持っていたリンゴが転げ落ちた。
トン、トン、とリンゴは転がっていく。
それはやがて年季の入ったエルヴィンの大きなブーツのつま先に当たり、止まった。
彼の視線は転がってきたリンゴの道を逆にたどっていく。

「…………………!!」

その先に佇む困り顔のジャンの母親を見つけると、エルヴィンは言葉を失った。

エルヴィンは上からごつごつとした、分厚い彼の手をゆっくりと下ろす。
拾い上げたリンゴは、ジャンの母親が手にしていた物と同じとは思えないくらい、こぢんまりして見えた。

「あぁ、申し訳ありません。私はここにいるジャンボ…ジャン・キルシュタインの母親で…」
「バッ…バカ、エルヴィン団長だぞっ!!」
「まぁ、この方が!?それならなおさらきちんとご挨拶をしないと…!」

エルヴィンに挨拶を始めようとした母親に、ジャンは慌てて彼らの間に割って入ろうとする。

「エルヴィン団長、すみません。僕は部外者は入ってはいけないと何度も注意したんです。すぐに追い払いますから――――」

そう言って彼がエルヴィンに謝罪をしようとしたところ、彼は手に持つリンゴを袖口で拭き、穏やかに微笑んだ。

「…いや、キルシュタイン。それには及ばない。私が許可しよう。息子想いの、とても素敵なお母様だ」
「は、はぁ…でも、」

口ごもるジャンを尻目にエルヴィンは彼の母親に一歩近付くと、彼女の手を取り、まるで何かとても大切な物を渡すかのように、リンゴを手渡した。
リンゴを手渡しても、エルヴィンはその手を離さない。

「……いや…、本当に素敵だ」

エルヴィンはジャンの母親を熱っぽく見つめながら、独り言のようにつぶやく。
そしてそっと、彼女の手のひらをなぞった。

「あぁ…貴女の手は、何と滑らかで白く、美しいのだろう」
「?!!?」
「あらやだ、エルヴィン団長様ったら…」

うっとりと母親に話し掛けたエルヴィンに、ジャンは耳を疑った。

「私は神に懺悔をしなくてはいけない。今日、この瞬間まで私は神の存在を信じた事は無かった…しかし貴女に会ってしまった今、私は彼の存在を信じずにはいられない」

きっと、エルヴィンのファンなのだろう。
何人かの女性兵士の悲鳴が上がった。

「ま、まぁ…こんなおばさんに何をおっしゃるのかしら…!」
「―――これは事実です。しかし私は同時に、やっと信じた神を怨まずにはいられない…何故ならば、貴女には既に決まった方がいるのだから。きっと素敵なご主人なのでしょう、私なんかよりもずっと」
「い…嫌ですわ、エルヴィン団長様。私の主人はただのしがない勤め人ですのよ…おばさんの心を弄ぶのはやめてください」
「弄んでなんかいません。私は今、ただ貴方に出会えた喜びにうち震えている――――それが貴方をからかっているように見えるのなら、私にとってそれ以上悲しいことはない」
「そんな…困りますわ、エルヴィン団長様…」
「照れる貴女の顔はまた特別可愛らしい…何て罪なひとなんだ」

ジャンは目の前で起こっている、自分の母親と自分の所属している組織のトップとのやりとりが信じられず、ただ口を開けて呆然とそれを眺めている。
人前に出すのさえ恥ずかしいと思っている自分の母親を、あのエルヴィン団長が息子の自分を含む大勢の人前で堂々と口説いているのだ。
母親がまた戸惑いながらも有頂天になって喜んでいるのが透けて見えて、何とも言えない気持ちになる。

「リ……リヴァイ兵長、これは一体何がどうなって―――――」
「フン…あいつの悪い癖だ。放っておけ」
「放っておけって…!!」
「俺の見たところ、お前の母親の見てくれはあいつの趣味にピッタリだ…諦めろ、キルシュタイン」
「!!?!?!」

開いた口の塞がらないジャンの目の前で、今もエルヴィンは彼の母親を口説いている。
リヴァイはそれに構わずに、さっさと自分の席へと歩いて行った。

「か…からかってるだけだ、多分。エルヴィン団長は、俺の母ちゃんをからかってるだけなんだ…」

ジャンは目の前の光景を必死に否定しようと頭を抱えながら大きな独り言をつぶやく。
通りがかったエレンが「お前の母さん、モテるんだな」と言ったので、ジャンは彼の胸ぐらを思いきり掴んだ。
 
back
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -