「なぁエレン、ピザって10回言えよ」
「は?何でそんな事言わなきゃいけないんだよ」

昼休み。兵士たちが昼食をとる賑やかな食堂で、ニヤニヤと話し掛けてきたジャンが悪意を持っていたことに気が付いていた訳では無いのに、エレンは即行で彼のリクエストを拒絶した。
エレンの隣でアルミンが苦笑いを浮かべたのは気に留めなかったが、彼の向かいに座るミカサが小さくため息を吐いたのでジャンは余計にカチンときた(そもそもジャンはミカサの前でエレンを引っかけクイズでバカにしてやろうと思って話し掛けたのだ)。

「ハァ?!お前は本当にムカつくヤツ――――」
「ジャン、オレそれ知ってるぜ!ヒジ、ヒジ、ヒジ、ヒジ・・・」
「最初はピザだっつってんだろ!!バカは黙ってろ!!」
「バカって言うな!!」

自身満々で会話に入ってきたコニーの致命的なミスにますます苛立ったジャンは、彼に八つ当たりを始めた。

「・・・可愛いですね」

離れた席でエルヴィンと昼食をとっていたなまえは笑いながらパンをちぎった。
いつの時代も同じだな、と向かいでエルヴィンも笑う。

「じゃあなまえ、好きって10回言ってみてくれないか」
「え?好き、ですか?」

やり古されたゲームでも初めて聞く単語になまえは首を傾げる。
それでもすぐ、いたずら顔のエルヴィンに引っかかるまいと言い聞かせてから、用心深くお題を声に出す事にした。

「好き、好き、好き、好き・・・」

10回言い終わったなまえは、エルヴィンの次の言葉に身構える。
エルヴィンはにこりと微笑んだ。

「なまえに好きだと言って欲しかっただけだよ」
「!!!!」

一瞬で真っ赤になったなまえに、エルヴィンは、はは、と声を出して笑った。
なまえはせっかくちぎったパンを、しばらく口に入れる事ができなくなってしまった。



おわり

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