兵長と守銭奴/9*R18


寝室まで抱えてきたなまえをベッドに横たえながら、リヴァイはまた彼女の唇に吸い付いた。
リヴァイはなまえと唇を重ねることが、心地良く、気持ち良いことに感じる。
柔らかな彼女の唇を味わいながらドレスの中に手を入れ下着の上からその茂みに触れればそこはしっとりと濡れていたので、リヴァイはほくそ笑んだ。
彼が濡れてるな、とわざわざ彼女に報告すれば、なまえは羞恥に顔を覆う。
覆った手に構わずリヴァイがその顔に口づけをすれば、ますます彼女の胸をどきどきとさせて、なまえは浅く呼吸を繰り返した。
なまえが顔を覆う手をどけないので、リヴァイの唇は首筋を伝いデコルテへと降りていく。
その双丘の先端に舌を這わせれば、なまえは背中をしならせ悦んだ。

――――――懲りもせずに、とリヴァイは思う。

自分は彼女を一体どうしたいのだろう。
自らの将来など考えることのない自分が、なまえを引き寄せ、身体を重ね、“先有る”彼女に歪な執着心まで抱くようになっている。
彼女に執着心を抱きどうにかなったところで、その先を保証できるものなんて何も無いというのに。
近頃リヴァイは時折無意識にそれに思考を巡らせては我に返り、その度にいつも、考えても仕様の無いことだ、と思い至る。

赤く色付いたそこを口に含み舌で先端を転がすと、なまえはますます甘い声を上げる。
柔らかな彼女の胸に顔を埋めれば汗ばんだ肌がなまえの匂いを感じさせてリヴァイをますます悦ばせた。
他の人間の汗ばんだ肌に触れたいという欲求がリヴァイに浮かぶことは、全く考えられなかった。
なまえの身体は柔らかく、甘く香り、限りなく頼りない。
きっと立体機動を着けることさえままならない程、弱い身体だろう。
巨人と対峙すればその瞬間に命を落とすような、か弱い存在だろう。
けれどそれが、普通の女だ。
それが、なまえだ。
柔らかくて頼りなくて、やさしく触れてやらなければ、簡単に壊れてしまいそうな。

胸の先端を弄っていた指を下腹部へと近付けていく。
足の付け根あたりに触れ、まさぐってから彼女の下着の中へと手を入れれば、なまえはびくりと身体を動かし声を上げた。
溢れているそれで、下着はすっかり濡れている。
するすると指を動かせばなまえがあえかな声を漏らすので、リヴァイは舌で胸を刺激しながらそこへも丹念に愛撫を施した。
いつも通り、彼女のそこは簡単にリヴァイの指を飲み込む。
それでも慣らした方がいいと分かっているからいつもそうするのだけれど、指をしっかり飲み込むその感触を感じれば、いつもリヴァイはすぐにでもそこへ自身を挿れてしまいたくなる。
指を大きくスライドさせれば、ぐちぐちといやらしい音を立てた。

「聞こえるか?」
「っ、あ、・・・リヴァイ、兵士長・・・、やめ、んっ、はずか、し・・・、!」

快感と羞恥に歪ませた顔をリヴァイから逸らすと、なまえはふるふると首を振った。
そんな扇情的な顔でやめろだなんて、よく言えるものだ。
こういうシチュエーションで彼女に名前を呼ばれるというのは、悪くない。

「・・・挿れるぞ」

リヴァイは起き上がり彼女を見下ろすと、濡れそぼったそこへ硬くなった自身を宛がった。
なまえは期待とも不安ともいえるような顔で自分を見上げている。

「―――――ひゃ、んんっ・・・!」

入り口を探すようにぬるぬるとそれを動かせば、なまえは身体を捩り、喘いだ。
彼女の腰を掴み自身を挿れれば、絡みつき飲み込まれるようなその感覚にぶる、と身体を震わせ、リヴァイも深く甘い息を吐き出す。
なまえはさらに大きく、甘く鳴いた。
ゆっくりと腰を動かせば更なる快感がもたらされる。
深くまで挿入すれば自身が持って行かれそうな程彼女の中がきゅうきゅうと締め付けてくるように感じて、リヴァイは上気させた顔を苦笑させた。

「おい、なまえ。あんまり締め付けるんじゃねぇよ・・・すぐイッちまうだろうが」

その言葉に顔を真っ赤にしたなまえは、目を白黒とさせる。

「しっ・・・、知りません、そんなの!」

リヴァイはふっと笑うと奥深くまで挿れたそれを引き戻し、そしてまた深く、突いた。
大きく腰を動かせば、なまえは淫らに顔を歪め甘く喘ぐ。
―――――そう、リヴァイは彼女のその顔を眺めるのが、たまらなく好きなのだ。
満足げにそれを見下ろしながら、リヴァイは強く、彼女に腰を打ち付けた。

「ああっ、・・・はっ・・・、ん、あ・・・っ!」

両足を持ち上げ彼女の身体を屈めると、リヴァイは更に彼女の奥深くに自身を突きさす。
彼女の奥に当たる感覚が、たまらなく気持ちいい。

「・・・分かるか?奥に、当たって―――――――」

上気した顔で、リヴァイもまた、色を帯びた息を吐き出す。
浴びせられるような快感に、彼もなまえ同様、ただ溺れていた。

――――――この瞬間だけは、目の前にいる彼女と自分、それさえ見ていればいいのだと、リヴァイは思うことができる。
それは永遠に掴んでおくことはできないのであろう、遠い、幸せな夢だ。

なまえが綺麗にセットした髪型は、もうすっかり乱れている(そしてそれは、彼にとってはとても扇情的な姿に映る)。
顔に張り付いたなまえの髪を除けると、リヴァイは彼女に再び、口づけをした。



リヴァイは窓から差し込む朝日を悪いと形容されることの多い目つきでねめつければ、乾き目がしぱしぱとするようだった。
浅い眠りはいつも通りだが、それでも少し、身体は安らぎを得ていたような気がする。
シュンシュン、とポットが上気を勢いよく噴き出し、パンの焼かれる匂いがキッチンに広がっている。
コンロの火を止め振り返ると、洗面所から出てきたらしい部屋の主がぎこちなく、固まっていた。


「・・・おはよう、ございます」

食卓にはサラダとフォークが2つずつ、行儀良く並べられている。
それをまじまじと見つめた後、リヴァイはほう、とつぶやいた。

「守銭奴よ、お前にしちゃ気が利くな」

健康の為、なまえは朝食をなるべく摂ることにしている。
特に今日のような、休日の朝は。

お決まりの悪態に呆れ顔とため息1つを返すと、なまえはリヴァイが火を止めたポットから、用意していたティーポットへと湯を注いだ。
砂時計をひっくり返すと、ティーポットと一緒に食卓に揃えて置いた。
彼女が紅茶を煎れているらしいことを確認し、リヴァイは食卓の椅子を引く。
バスケットに移したパンを食卓に並べると、なまえもそこへ腰掛けた。

「食べられるようでしたら、ご自由にどうぞ」

そっけない台詞とは裏腹に食卓には、リヴァイからすれば、手厚い朝食が並べられている。
自分の顔を一切見ようとしないなまえの耳がほんのり赤く染まっていたので、呆れたように鼻でふっと笑うと、リヴァイはフォークを手に取った。
特に何を話す訳でも無い。
静かな部屋には、2人がゆっくりと朝食を摂る音だけが立てられていた。
リヴァイは椅子の背もたれにしっかりともたれかかりそこへ左腕を引っかけると、ティーカップを手に取った。
陽に透けて、ますますその紅色が美しく映る。
その色を眺めた後リヴァイはそれを傾けた。
そして、部屋を見回す。
こうして明るい時間に彼女の部屋をじっくりと見るのは、彼にとっては初めてのことだった。
光に溢れる食卓、ゆったりとした時間、何と穏やかで、平和な瞬間だろう。
しかしそれが自分の手にしっかりと掴むには遠いものであるということを、彼は知っている。

視線を移せば、なまえは再びポットに水を入れ、火に掛けようとしているところだった。
あまりにも穏やかなその立ち姿を見つめたリヴァイの胸には、いつもと同じ、あの感覚がこみ上げていた。

手を伸ばせば届きそうな距離に、それはある。
けれどそれを望めはしないことを、彼は知っている。
目の前にあるそれは、あまりにも幸せで、残酷な、錯覚だ。

ティーカップを静かにソーサーへ戻すと、リヴァイは食卓に腕を置いた。
前のめりに座った彼の前髪がさらりと揺れる。
そして静かに、なまえの名を呼んだ。
振り返ったその顔をじっと見つめれば、いつにない表情の彼に、なまえは少し、硬い顔を作る。

そよそよと風が入り込み、真っ白なレースのカーテンが揺れている。
どこからか聞こえてきた鳥の鳴き声を、鳴り始めた時計台の時報の鐘がかき消した。
それは余りにも平和で、罪深い。

――――何を思い感じても、結局こうして思考は巡り、空しく元へ戻る。
・・・そして不毛に繰り返す、懲りもせずに。

――――それでも何故だろう。いつも、どうしても、彼女を求めずにはいられないのだ。
ひょっとしたらそれが、いつか彼が見せられた“運命”というものの仕業なのかもしれない。
尤もそんな言葉は、彼にとっては生来、忌むべき言葉であるのだけれど。

鐘が鳴り止んでもなお、2人は神妙な面持ちで向かい合っていた。
やがてリヴァイは決心したように薄い唇を開く。
それでもやっぱり彼はこの瞬間、求めずにはいられないのだ。
幸せで残酷な、錯覚を。


「・・・おい、なまえ。キスさせろよ」


―――――そう、この気持ちはいつも、ループ線を描く。


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