兵長と守銭奴*R-18


空には分厚い雲が立ち込めて、日暮れ前だというのにどんよりとした灰色の風景が広がっていた。
調査兵団本部の団長室にも、同様に不穏な空気が漂っていた。

「ここと、ここと、ここ。馬にどれほどの価値があるかお分かりですか?」

なまえはリヴァイに書類を突き返し、泰然自若な顔で言った。
リヴァイは青筋を立てて静かに答えた。

「ドケチババア・・・てめぇが一度壁外調査へ行ってきたらどうだ・・・さぞかし良いバカンスになるだろう」
「お言葉ですが、リヴァイ兵士長。私はあなたより年上ではありませんので、少なくともあなたにとって私はババアではありません」

他の兵士であれば震え上がるであろう彼の恐ろしい表情にも、なまえはひるまず胸を張ってツンとしている。
間に挟まれるエルヴィンは、またか、と苦笑いを浮かべた。

「まぁまぁ・・・。分かったよ、なまえ。馬の頭数については本当に最低限度であるのかもう一度検討してみよう。」
「最初からそうしていただけると助かります。予算は限られていますので。民の血税ですから。」
「全く口が減らねぇ守銭奴野郎だ」

なまえは挑発するリヴァイには一瞥もやらず、エルヴィンに礼をするとさっさと団長室を出て行った。
バタンと閉じられたドアを眺め、リヴァイはますます眉間の皺を深くした。

「あのクソアマぁ・・・そのうち必ずあの小生意気なケツを×××××てオレの××を×××らせて×××××××てやる」

青筋を立てたまま静かに卑猥な言葉を並べる彼の部下に、エルヴィンは額に手を乗せ天を見上げた。

なまえ・みょうじは王政府の若き中央官僚だ。
ただ一人に任命される調査兵団付きの任を受け、最近ウォールローゼの調査兵団本部に赴任してきた。
仕事はというと、調査兵団における財務と壁外調査におけるその予算の事前監査が主なもの。
壁外調査についてはエルヴィンら幹部の作成した調査計画書と予算申請書を厳しくチェックし、政府への提出前に予算をできるだけ抑えておくという仕事が彼女一人に任されている。
その為幹部らとの衝突は避けられない。
エルヴィンらとは概ね最低限の良好さは保っているが、リヴァイとはどうもウマが合わないらしく、二人は犬猿の仲と専らの噂。
顔を合わせる度に衝突していた。

(失礼しちゃうわ、ババアだって!私がババアならあの人もジジイでしょ!)

他の兵士たちとは少し異なる、体のラインが綺麗に見える女性らしいブラウスに、こげ茶のベルトを合わせた淡いベージュのスリムなパンツ。
調査兵団本部を颯爽と歩く姿が凛々しい。
なまえは専用に用意されている財務官事務室に戻ると、ドカっとふてくされたように椅子に座った。
机に山積みの書類を眺めて、大きくため息をつく。
壁外調査の予算の査定が終わっても、まだまだ彼らの財務関係のチェックは山積みだ。
机に頬杖をつき、ガックリとうなだれた。


パタパタと、窓を打つ音がする。
なまえは事務仕事で凝り固まった肩をほぐすように首をぐるぐると回すと、窓を見た。

(雨か・・・いつ降ってもおかしくない感じだったもんね)

再び書類に視線を落とすと、突然ドアが開かれた。
目の窪みに怒りをたたえたままのリヴァイの顔が覗いた。

「・・・ドアを開けられるときはノックをお願いします」
「おい守銭奴・・・お前の頼みで見直しをしてやったんだろうが・・・つべこべ言うんじゃねぇ」
「それはどうも。拝見します。どうぞあちらへ」

なまえはデスクの前にある立派な応接セットの方へ手をやり、奥の三人掛けのソファへリヴァイを座るように促した。
書類を受け取り、問題の箇所になまえは目を通す。
しばらく書類を見ているうちに、窓を打ち付ける雨音は強くなっていった。
空は真っ暗になり、点けておいたいくつかの灯りが部屋をぼんやりと照らしている。

「・・・そうですね、先程よりは改善されてます。ただ、まだここに使われる頭数に整合性が――――」
「兵士の数はこれ以上減らせねぇ・・・それに伴う補給物資を運ぶ馬もだ」
「再検討をお願いします」
「・・・頭の悪い女だ」
「私がこれを通しても、政府から同じことを言われるだけですよ」

しばらく押し問答をしていたが、リヴァイは舌打ちをすると再提出した書類を手に、ソファから立ち上がった。

「お待ちください。こちらに前回許可された調査計画書と予算申請書が・・・こちらを参考に再度ご検討ください。」

なまえがデスクから分厚い封筒を取り出しリヴァイに差し出したその時、なまえの目にはそれを受け取ろうとしたリヴァイがまるで白黒に切り取られたかのように映った。
その瞬間、バリバリと、耳をつんざくような雷鳴が轟く。
なまえは耳を押さえ、悲鳴を上げた。

「・・・ほぉ、面白い。守銭奴、てめぇは雷が苦手なのか?」

リヴァイは怯えた様子のなまえを見下し、優越感に浸るかのように笑った。
彼女はその顔にムキになり、青い顔のまま耳を押さえていた手をパッと離すとリヴァイをにらみつけた。

「ち、ちがいます。雷なんか怖くありま――――」

また、フラッシュが焚かれたかのような一瞬の強い閃光が走る。
なまえは反射的に耳を押さえ、目をぎゅっと閉じた。
直後、ものすごい音を立てて雷鳴が鳴り響き、部屋を揺らした。

「きゃぁああああああ!!!!」

なまえはもう、リヴァイの前で何を取り繕うこともできなかった。
耳を押さえしゃがみこみ、恐怖にわなわなと体を震わせていた。
小さな閃光と、ゴロゴロと、その後の雷鳴の勢いを溜め込むかのような遠雷が聞こえてくる。
あまりもの彼女の怖がりように、リヴァイは面白がった。

「てめぇもちょっとは可愛げあるじゃねぇか、クソアマ」

また、部屋中が真っ白になる。
空を真っ二つに切り裂くような雷鳴が轟き、またも強く、部屋を揺らす。
振動で、点けていた灯りのうち1つを残し、全て消えてしまった。
薄暗がりがなまえの恐怖を更に煽る。
なまえは取り乱し、灯りが消えた瞬間、目の前のリヴァイにしがみついていた。

「・・・・・・・・・・・・」
「た、助けて・・・」
「・・・どうお前を助けるんだ、雷は俺でも削げねぇ」
「ど、どうって、」

稲妻と雷鳴が同時に鳴り響いた。
なまえはもう目をぎゅっと閉じてリヴァイにしがみつくことしかできなかった。
部屋には強い雨音と、雷鳴が交互に響いている。
リヴァイもなまえも、しばらく黙っていた。
ちかちかと小さな閃光が部屋を照らす中、リヴァイが徐に口を開いた。

「・・・おいなまえ」
「・・・は、はい・・・」
「乳を俺の股間に擦り付けるな」
「・・・は、はい・・・っ?」

なまえはぎゅっと閉じ続けていた瞳をぎょっと開けた。
確かに、リヴァイにしがみついている自分の胸が彼の股間に当たっている。

「勃ったじゃねぇか」
「あ、あ・・・あ?!」

全く気にも留めなかったが、確かに胸に当たっているモノから硬く隆起しているような感触を感じる。
なまえは雷への恐怖と、不測の事態にさらに頭が混乱し、目を白黒させた。
それでも恐怖のあまり、リヴァイから離れることはできない。

「・・・どうしてくれるんだよ」
「あ、あ、え・・・?!」

先程までの何にも怯まない堂々とした態度が嘘のように、なまえは話すことさえできない。
リヴァイはそんな彼女を見下ろすと、自分にすがる彼女と同じ視線になるまでゆっくりとした動作で腰を落とした。
片手でなまえの頬に手を当て、唇を重ねる寸前で顔を近づけるのを止める。

「なぁなまえよ・・・そんなに雷が怖いのなら、気を紛らわしてやろうか」
「え、えっ・・・きゃあああああ!!!」

リヴァイの行動と言葉に動揺しつつも、またも落ちた雷になまえは彼にしがみつく。
ピリピリと壁が揺れる音がした。
未だ、豪雨の中幾度も閃光が無音で部屋を照らす。
なまえはやっとの思いで彼の首にしがみついていた自分の顔を、震えながらもゆっくりと離した。

「・・・す、すみませんリヴァイ兵士長、わ、わたし、雷が本当に―――――」

眼前で涙目で訴えるなまえの顔が、強い光に瞬間的に照らされる。
リヴァイはその一瞬のうちに彼女の頭を両手でガシっと掴み、なまえの言葉の続きは、大きく轟く雷鳴と一緒にリヴァイの口の中に消えた。
話しかけた口を塞ぐような、雷に怯える彼女の悲鳴を止めるような、強引なキスだった。
なまえは驚き、涙でにじんでいた目をぎょっと大きく、丸くした。
リヴァイにその両手でしっかりと顔を拘束され、動かすことはできない。

「・・・うるせぇから黙ってろ」

事実、先程目の前で上げられたなまえの悲鳴に、リヴァイは鼓膜が破れるかと思った。
リヴァイはぶっきらぼうな言葉とは裏腹に、なまえの唇をやさしくくわえるように、少しずつ角度を変えながら唇を重ねた。
震えていたなまえの唇は、リヴァイのキスに解かされていくように少しずつ熱を帯びていく。
やがて、リヴァイは少し開いたなまえの唇を軽く舐めながら、彼女の唇を味わうようにキスを重ねていった。
なまえは未だ、少し震えていた。
鳴り響く雷への恐怖よりも、リヴァイにこんなキスをされて、不安にも期待にも似たような、言いようのない胸の昂りに襲われていた。
彼のキスは、これだけでもなまえの胸を痺れさせるには十分なものだった。
リヴァイの舌はするすると、少しずつ、なまえの口の中へと侵入していった。
舌先を軽くなぞられ、ゆっくりとした動きで徐々に舌が絡まされていく。
まるでアイスを舐め溶かしていくような、やさしい舌使いになまえはぞくぞくとした。
すっかり口を塞がれキスはどんどん深くなっていく。
やはりゆっくり、ねっとりとした動きで、リヴァイはなまえの舌の裏や上あごを刺激していった。
遠雷と一緒に、なまえの声と吐息が漏れる。
全身が甘く痺れ、リヴァイの肩に力なく掛けられていたなまえの腕はだらりと下ろされた。
舌を吸われ、絡まされ、なまえはとろけるようなリヴァイのキスになされるがままだった。
やがて彼女を拘束していた彼の手は、やさしくなまえの耳をゆっくりと、かすかに触れるように動きはじめた。
片手はやがて彼女の耳、首筋、顎へ当てられ、微かに愛撫するように動かされる。
官能的なキスに、なまえは小さく声を漏らす。
なまえの耳にはもう、雷鳴は届かなかった。
二人は互いの唇に没頭するかのように、吐息を重ねていた。
リヴァイは次第になまえの唇から頬、耳へと唇を滑らせる。
なまえは少し堪えるようにしていたが、我慢できず、リヴァイの舌の動きに反応し何度も甘い声を上げた。
彼に与えられる快感になまえはどんどんとその深みにはまっていく。
もっと自分に触れてほしいという気持ちさえ湧き上がっていた。
それでも、リヴァイは自分の体には触れてこない。

「あ・・・っ、・・・リヴァイ、兵士長・・・私、もう――――・・・」

なまえが切なげに訴えると、リヴァイは彼女をひょいと持ち上げ、ドアの鍵をガチャリと片手で閉めると、3人掛けのソファに横たわらせた。
リヴァイは彼女にまたがりジャケットを脱ぐと、二つに折ってソファの背にそっと掛けた。
彼が自分のスカーフに手を掛けたので、なまえは自分が言ったくせに、自分でも驚くほど胸がドキリと音を立て、急に不安になる。

「あ、あの、リヴァイ兵士長・・・ここで、そんなこと・・・して、――――いいんでしょうか・・・」

スカーフを外しボタンに手を掛けたリヴァイは、不安げに自分を見つめるその瞳にニヤニヤと笑った。

「そんなことって、てめぇ何するつもりなんだよ?」
「えっ、あの、いえ、ちがうんです・・・!」

顔を真っ赤にしてなまえはあたふたと両手を振った。

「お前は本当に頭の悪い女だな、冗談も分からねぇのか」

なまえは赤い顔のまま、目をぱちくりとさせた。

「俺はもうとっくに止められなくなってるんだよ」

なまえはさらに顔を赤くした。
その表情に、リヴァイはほんの少し、やわらかく笑う。

「――――途中で止めろとか言うなよ」

「・・・・・・・・・!」

彼のその小さな笑みに、なまえの胸はどうしようもなく大きな音を立てた。

(あんな顔で、わらうんだ――――)

リヴァイの素直に笑むような顔を見るのは、初めてだった。
何しろ顔を合わせばいがみ合いしかしてこなかったのだから。
いまはまるで別人のように彼がうつる。
呆気に取られたように、惚けたように彼を見つめるなまえに、リヴァイの形の良い、薄い唇がふたたび近付いて来る。
なまえはそれが待ち遠しくてたまらなかったかのように、それを受け入れた。

互いの唇を愛撫するように、何度も何度も口づける。
舌の形を確かめるように、なぞったり、吸い付くようなキスを重ねる。
吐息を絡ませながら、リヴァイはなまえのブラウスのボタンを1つずつ外していった。
下着を上へずらし、やがて露になった白い胸を手でそっと包むと、なまえの体はぴくんと小さく反応した。
しばらく揉みしだかれやがてそれが先端にゆっくりと触れると、なまえは甘い声を上げてのけぞる。
リヴァイはその首筋に唇を落とし、胸を刺激するその指と舌でますます彼女の甘い声を誘った。
首筋から胸へ次第に舌は移動していき、じらすようにその周りをゆっくりと舐めまわす。
なまえは更なる快感の予感に、自分の胸に迫るリヴァイの頭を薄目を開けて見つめた。
胸の敏感な部分にそっとリヴァイが舌で触れると、なまえは体を大きくのけぞらせ、大きな声を上げた。
リヴァイはその姿を見て満足気に、舌先でそこへの刺激を強める。
彼の片手は次第になまえのベルトを外し、パンツと下着を取り払おうとした。

「・・・やっ、リヴァイ、兵士長・・・あの、それは―――――」
「何言ってやがる。脱がなきゃできねぇだろうが」
「だ、だって、恥ずかしくて――――」

なまえはパンツに手を掛け、リヴァイの脱がせようとした手を拒んだ。
自分はブラウスがはだけ、下着が上にずらされて上半身が露になっているが、彼はスカーフを外しただけで服を着たままだったし、元々こういったことが得意なわけではなかった。
リヴァイは仕方ないなというふうに小さく息をつくと、ソファの背に掛けていた自身のジャケットを、彼女の下腹部にそっと掛けた。

「・・・これでいいか」
「・・・・・・・・・」

なまえは一瞬の間の後、小さく、はい、と頷いた。
彼が女性にこんな気遣いができるのかと、小さな驚きを覚えながら。

リヴァイは胸への愛撫を丁寧にしながら、ジャケットの下から彼女の下着をやさしく脱がせ、ふとももからその間へと、撫でるようにゆっくりと手を動かした。
彼の手が自分のそこへすぐに触れると分かったとき、なまえは一瞬身を硬くしたが、既に熱を帯びて潤っていたそこは、その指に触れられることを悦んだ。

「―――ああっ・・・!んっ・・・はぁ・・・、」

なまえは恥ずかしいのか、大きく吐息の漏れた口を手で覆った。
リヴァイはそれを見て、その手を掴むと再び彼女にキスをした。
彼のとろけるようなキスと自身への甘い刺激に、なまえは体をびくびくと動かす。
指で触れられ、やさしくねじ込まれ、リヴァイの指には彼女のそこのちゅるちゅるとした感触がどんどん増していく。

「・・・ベッドの上ではえらく素直だな」

唇を離したリヴァイが眼前でいたずらっぽく、意地悪そうに笑ったので、なまえは顔を真っ赤にして首を振った。
彼はそのまま自身のベルトと、そこに着いた固定ベルトの固定具を外すとパンツと下着を脱いだ。
露になった彼のそれ自身に、なまえはドキリとして息を飲む。

(あれが、私に――――)

なまえは一瞬考えただけで、体が燃えるように熱くなった。

(私が、彼をそうしたの・・・)

そう思うと、胸が甘く締め付けられるような感覚を覚えた。

「もう、いいな?」

(・・・俺も、余裕ねぇな・・・)

リヴァイは呼吸を整えるように大きく息をすると、手探りで自身をなまえのそこに当てがった。
彼女も、もうそれがほしくてたまらなかったかのようにすんなりとそれを受け入れる。

「っあ、―――うぅん・・・」

奥に入れば入るほど、彼女は切なげに喘ぐ。
自身をずっぽりと飲み込まれるような感触に、リヴァイも色っぽい吐息を吐いた。
彼の乱れる呼吸になまえはますます溺れていく。

「ん、・・・あぁ・・・っ・・・」

はぁ、と吐息を吐き出すようにすると、リヴァイは腰をゆっくりとした動きに変えながら、二人を繋げているそこを眺めて言った。

「・・・おい、ちょっと待て」
「あ、な、何ですか」
「ジャケットちょっと取るぞ」
「えっ、えっ、だ、だめ・・・!」
「いや、そうしなきゃお前が困ることになる」
「っ、え?」
「暗いからそんなに見えやしねーよ、お前の顔だってぼんやりしか見えねぇのに」

訳が分からず慌てるなまえにお構いなしに、リヴァイは彼女の下腹部を隠していた彼のジャケットを取り上げた。

「・・・やっぱな・・・。なまえ、このままだとソファにべったりお前の下から出たもんが着く・・・まぁ、既に着いてるが」
「うっ・・嘘!!ダメ、絶対にダメです!」

リヴァイは動きを止めないが、なまえはぎょっとして訴えた。

「俺のジャケットにだって多分もう着いてる」
「あっ・・・ん、す、すみませ・・・で、でも、っ、」
「仕方ねぇなあ・・・おい、体をねじってソファに手を付けろ」
「・・・えっ、えっ、こ、こうですか・・・?!」

なまえはぎこちない動きで体をねじろうとする。
リヴァイはやさしくそれをサポートし、後ろから二人が繋がるような体勢に、ゆっくりと移行させた。
もっとも、一度抜いて体勢を変えた後にまた挿入すれば早かったのだが、リヴァイは彼女からそれを抜き取りたくなかったがための行動だった。
リヴァイは床に足を着けるとなまえの丸みを帯びた胸を後ろから鷲掴みにし、浮かした彼女の腰に自身のそれを抜き差ししはじめた。
ゆっくりとしたリズムと早いリズムを繰り返し、なまえは自分に深く、浅く出入りするそれに甘い声を上げる。
あまりもの快感に、二人は互いの体の境界線がなくなったように感じていた。
やがてリヴァイの腰の動きが激しくなる。

「あ、・・・い、く」

なまえの腰をがっしりと掴み強く何度も打ち付けると、悩ましげな吐息と共にそれを抜き取り、“小生意気な”なまえの尻に熱いものを掛けた。
雨も雷も、すでに遠くなっていた。




「・・・で、どういう事でしょうか、これは」

翌日財務官事務室へ訪れたエルヴィンとリヴァイを前に、なまえは冷たい薄目で彼らをぎろっと眺めながら、静かに怒りを口にした。

「これ、この間リヴァイ兵士長にお返ししたときと何も変わっていません。再考してくださいとお願いしたはずです。参考資料もちゃんとお渡ししました」
「ま、まぁまぁなまえ。やはりこれ以上は我々でも削ることはできない。兵士を失うリスクをこれ以上高めたくない。そのリスクをこれだけのコストで抑えられるのなら、無駄でもないと思う」
「守銭奴風情が分かったことを言うんじゃねぇ」

リヴァイもなまえ同様薄目で、いつものように青筋を立てて応戦した。

「・・・兵士を失うリスクですか。私はデータ上でしかそれを計れません。それならば、エルヴィン団長。これはこのまま政府に提出します。あちらからこれについて指摘を受けられたら、彼らが納得するようきちんとしたご回答をお願いします。・・・私は、あなたたちの現場のことを全て理解できているわけではありませんから」
「――――なまえ、助かるよ」

エルヴィンは意外そうに、嬉しそうに答えた。

「いえ、私は納得したわけではありません。このまま政府に判断を委ねるだけです」
「・・・たまには少しは役に立つじゃねぇか、守銭奴」

なまえはリヴァイを見ずに硬く笑みを作り、ピクピクとこめかみを震わせた。

「では、もうお引取りください。わざわざこちらまでご足労、ありがとうございました」
「ああ、無理を言ってすまなかった」

エルヴィンが立ち上がったので、隣で足を組みふんぞり返っていたリヴァイも立ち上がった。
そのまま彼は、自身の座っていたソファに視線を落とす。

「・・・きれいじゃねぇか、ソファ」
「・・・・・!!!!!!!!!!!」

昨日リヴァイが帰った後、なまえはソファの“粗相してしまった”部分を、水を含ませたタオルで必死にクリーニングしていた。
彼女はそれまでのポーカーフェイスが嘘のように顔を真っ赤にすると、俊敏にドアを開き、「どうもありがとうございました!」とニヤニヤと笑みを浮かべるリヴァイと、不思議そうな顔をしているエルヴィンを強引に外へ追い出した。

リヴァイはなまえの部屋を出てエルヴィンと連れ立って歩く中、彼女のたくさんの表情を思い浮かべる。
今まで知っていた彼女の生意気な表情たちから、昨日初めて知った、なまえの子供のように怯えた顔、焦った顔、恥らう顔、切なげな、艶やかな表情。
すぐに眼前に浮かべられる彼女の表情のそのギャップに、リヴァイはこっそりと、満足そうに笑みをこぼした。

(・・・結構、いいじゃねーか)


おわり
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