兵長と守銭奴/5




リヴァイが最初から“そう”するつもりだったのか、酔って理性が揺らいでいるのだろう彼女のいつもとは違う反応が彼を“そう”させたのかは分からない。

いつもなら必死で堪えようとするはずのなまえの吐息と、リヴァイの欲望を掻き立てる彼女の切なげな声が、自分を求めて頼りなく彼の胸元を掴む彼女の手が、今夜は大して酔っていないはずのリヴァイのたがを一つずつ外して、彼は彼女を強く求める熱のような衝動に取り憑かれていくようだった。
奪ったなまえの唇に深いキスを何度も重ねながら、彼はもどかしい様子で上着を脱ぐ。
普通なら考えられないことだけれど、彼女の唇から自分の唇を外すのを嫌ってか、彼の上着はヘッドボードの端に無造作に引っ掛けられた。
やはりリヴァイはなまえから唇を外さぬまま、小さくベッドスプリングの音を立てて彼女を跨ぎベッドに乗る。
彼の冷たい手のひらで彼女の頬から耳にやさしく触れてみると、赤い顔をしたなまえの熱がじんわりと伝わってくる。
片手では自分の首もとのスカーフを解き、真っ白な彼のシャツのボタンに手を掛けた。
冷えた空気にさらされ冷たくなっていたリヴァイの唇も、彼女の唇の熱を奪ってか今はすっかり熱を帯びている。そして、寒い風にさらされて冷えていたはずの、彼の体すらも。
何かに突き動かされるように体を重ねて互いを強く求め合いキスをする二人は、彼女のきっちりとした人柄そのものにひとつの皺もなく被せられていたベッドカバーに大きな波を作る。
彼女のか細い首に顔を埋めリヴァイがその首筋を貪ると、なまえはリヴァイの背に腕を回し、ますます甘い声を上げて鳴いた。
冬の空気を溜め込んだ彼女の広い寝室でも二人の体はどんどん熱くなり、互いを求め合うキスは二人の境界線を溶かしていくようにより深くなっていく。

(“嫌い”か)

先程の彼女の言葉とは裏腹に、なまえは何と熱っぽい瞳で自分を見つめるのだろう。
今日はためらうことなく確かに自分に向けられているなまえの熱を帯びたその瞳が、その声が、その吐息が、リヴァイの彼女を求める衝動をさらに強くする。

(だからお前は、オレをこうさせるんだ)

彼女と同じように今の自分もまた、酒に酔って普通ではないのかもしれない。
リヴァイは苦笑を浮かべると、やはりキスを続けながら、なまえの服を脱がせ始めた。



「・・・おい、お前はこれを着て寝るのか」

バスタオルにくるまれてくてっとした様子でベッドに腰掛けるなまえは、眠くてたまらない様子でこくりと言葉なく頷いた。
相当酔っているくせに“どうしてもシャワーを浴びてからベッドに入りたい”らしいなまえを、リヴァイが苦労してシャワーを浴びさせてやったのはつい先程のことだ。
ベッドの足元に置かれたベンチにはナイトウェアが折り目正しく畳まれ置かれていて、いかにも彼女らしい。
頷いたものの全く動く気配のないなまえにリヴァイは小さくため息をついた。
ナイトウェアを手に取り広げると、彼はボタンを一つずつ外していく。
しげしげとそれを眺めながら、こいつは意外と女らしいのを着るんだな、とリヴァイは思った。
全てのボタンを外すと、リヴァイは彼女にそれを差し出してやった。

「自分で着れるだろうな?」

なまえはぼんやりとした表情ではい、と答え自分で上のナイトウェアを羽織ったものの、既に眠りかけているのか、一つ目のボタンをなかなかかけることができず、手元をふわふわと動かしている。
今にもぜんまいを巻いてやらなければならないからくり人形のようだ。
面白いのでしばらく眺めていたが、やがてしびれを切らしたリヴァイはそのボタンを一つずつかけてやった。
いつもなら絶対にありえないことだけど、全くの無抵抗だ。
下のナイトウェアを差し出すと、やはり彼女は半分寝たようにそれを手にしたままこくこくと頭を揺らしている。
呆れ顔を浮かべたリヴァイは、仕方なくそれも着せてやることにする。
下着を履かせなくていいものかと一瞬思ったが、こくこくと頭を揺らしているなまえがその居場所を教えられる気はしない。
確か以前エルヴィンが、寝る時は下着を着けないほうが健康にいいとか言っていた気がする。
簡単にそれを諦めると、リヴァイはなまえの足にナイトウェアを当てがった。
自分はやったことはないが、小さな少女のやる人形遊びというのはこういうものなのだろうか。
彼女は無抵抗ではあるものの半分寝ているようなものなので、リヴァイはやっぱり苦労して彼女に下のナイトウェアを着せた後、なまえをベッドに寝かせて布団を掛けた。
ベッドカバーの表面をさっさっと撫でて、きっちりと皺がないよう整えてやる。
随分面倒なことをしたけれど、何となく悪い気はしない。
リヴァイはベッドに埋まるように納まるとすぐに寝息を立て始めたなまえの額に、軽く指はじきをした。
なまえは少し遅れて、その眠り顔をしかめる。リヴァイは片眉を上げて、笑った。


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