03-2


***





「ふふ、少し笑いすぎてしまいましたね…。」
「ホントですよっ!!もう…、恥ずかしかった……。」


未だに仄かに紅いその頬を押さえながら、彼女は僕を恨めしそうに見る。


「すみません。…では、九郎に同行の許可を取りに行きましょうか。」



「‥‥‥‥‥‥あぁあ―――!!!」


僕の言葉を聞いた途端、
それまで赤かった顔を、今度は一気に青く染めて、昴さんが叫びを上げる。



「な、なに!?」
「天満先輩、どうかしたんですか!?」
「どうしよう望美!
絶対怒ってる!絶対嫌われてる!!」
「ちょ、落ち着いて昴!どうしたの?」
「あたしまだ義経さんに謝ってない!!!」
「……あ。」


土下座の練習したほうがいいかな…?と零す彼女に、また笑いが巻き起こったのは言うまでもない。





***





「弁慶さん弁慶さん、」
「おや、どうしました?昴さん。」



―漸く長話にも切りが付き、次にとるべき行動に移るべく、我々は屋敷を後にした。


朔殿に案内され、数歩前を行く彼女たちを見遣りながら。

さて、どうやってあの大将を説得したものか…と考えを巡らせている僕のもとへ、いつの間にかやって来た昴さんが並んでいた。



「いえ。くだらないことなんですけど。
…やっと笑ってくれたなぁ、って。」



そう、嬉しそうに微笑む君を前にして、
僕は咄嗟に返答出来なかった。


…君の口から出た言葉が、あまりにも意外だったから。



「…おかしいな、僕はそんなに仏頂面をしていましたか?」
「あ!そうじゃないんです!なんというか…

……あたしが馬鹿やって笑われるまで、ずっと取り繕ったような笑顔だったから、
…あたしたちのこと警戒してるのかなって思ってて……

あ!間違ってたらすみません、失礼ですよね!
えっと、それだけです!」



じ、じゃあ先に行きます!と駆け出す君を、僕は一体どんな顔で見送っていたのか。



………――――――驚いた。

……表情を操ることには多少なりとも自信があった。


九郎のような単純な人間はもちろん、
長年の付き合いである者にだって、そう簡単に悟られたことは無いのに。


…ほとんど初対面、と言っても過言ではない彼女に。

見抜かれていた、なんて。




「昴さん、君は……」


不思議な人、ですね‥‥‥‥





03:彼女の、力。



(…望美、スライディングとバック転、どっちがいいと思う?)
(…それ何の話?)
(だから、土下座の。)






09/5/6
re:11/5/4



contop



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -