03-1







『汝は我等の守人だ。』

『みんな、゙そごに、居るんだね。』


『昴が、守人なんだね。』





第三話





「守、人…?―――っ!」



―――ああ。
記憶の渦が、押し寄せる。

あたしは――……



「昴さん…?」
「四神、の、もりびと。
――――そうだ、思い出した…。
あたしの役目、守人…。
四人の子供にそう言われたんだ………あの 空 間 で‥‥」


あたしのなかに、何かの存在を感じる。

微かで、弱々しくて、今にも消えそうだけど。

確かな、存在を。





‥‥―それから。

あたしは、詮が外れたように一気に溢れ出した記憶の隅々まで、
取りこぼす事なく打ち明けた。

教室が可笑しかったこと。
現れた子供に言われたこと。

…あたしが、゛守人゛だと告げられたこと。



「そう…。みんなも、形を変えなくてはいけなかったんだね…
彼等が、四神だよ、昴。」





***






「――――先代も、先々代も、四神は呪詛された。龍の力が弱っていたから。

…そしてまた、私も力が弱くなった。
わたしはどんどん小さくなって、龍の形を保てなくなった。四神も、同じように力を失っていった。

私は、神子を捜すために狭間に行った。
…でも、それだけではまた四神は呪詛されてしまうかもしれない。

…私に、みんなを守る力はもう無かったから。


――だから、四神は手を打ったよ。


これ以上力を失って消えてしまわないように、形を変えて、捜しに行った。
再び元の形を取り戻せるようになるまで、その身を預けることが出来る器を持つ者を。」


そこまで言うと白龍は、その大きな琥珀色の瞳を昴につ、と向けると
哀しそうな色を宿し、眼を伏せた。


「……うん、うん…、分かっ、た…。

…四神は、
五行の流れが全て龍脈に還って、私に力が戻るまで、私の下には、帰れない、って…

五行が戻れば、四神が分かれて存在することも、神子を、元の世界に送ることも出来るけれど………」

「今すぐには、出来ないんだよな?」
「…ごめんなさい。」


…先ほど、白龍は何度も時空の狭間への道を開けようとしたけれど、力及ばず。

…――それでも白龍は望美の願を叶えようと、逆鱗を外そうとした。
もちろん、全力で止めに入り、現在に至る訳だが。



「………。」
「………。」

「……つまり、あたしにしても望美にしてもやるべきことは同じで、
平家が作り出してる”怨霊”を浄化して、その”龍脈”…に五行の力ってのを還せば良いってこと、かな?」
「ええ、今の話を纏めるとそのようですね…」


「やるっきゃない、か」


ぽつり、望美が呟いた。

確かに、それしか方法が無いのだから、迷うことなど出来ない。
他に、選択肢は無いのだから。


「そうですか…、
…でしたら、僕からお願いがあります。
望美さん。源氏に力を貸してくれませんか?

これからの局面、僕たちは平家との戦で必然的に怨霊とも闘うことになります。
白龍の神子である望美さんの力があれば、戦を有利に進められると思うんです。
……どうですか?」
「…怨霊を放って置くわけにはいかないよ。やります。」
「春日先輩!?」
「…あたしにもやらせてください。
力になれるか分からないけど、親友一人にこんな大変な役目を背負わせるわけにはいかないし!
ね?望美!」


そんな彼女を目にし、昴も名乗りを上げた。
その大きな色の瞳に、決意を宿して。


「っ昴!大好きっ!!」
「天満先輩まで…!?」





***





「全く…、適わないな、先輩たちには。」
「そういう譲くんだって、私たちが言わなくたってこうするでしょ?」
「まあ…そうですけど…」


最後まで昴達が戦に出ることに反対の態度を示していた譲も、
ある意味で敵わない先輩二人に押し切られ、渋々了解した。
どうやら、自分が戦うことに異存は無いようだ。

…ただ、傷付いて欲しくないだけ。


「ほらほら、ともかくこれから頑張ろっ!望美、ゆーくんこっち来て!」
「何?昴。」
「円陣組むよー、はい、肩組んで!」
「えっ、せ、先輩!?」


そんな譲の複雑な心情を察したのか、
この湿っぽい空気を打破するべく、昴の明るい声が響いた。


「現世組ー!ファイッオー!!」


軽い困惑の色を浮かべている彼の肩に腕を回し。
そして、反対側にはなんとも楽しそうな望美と腕を絡め。

せーの、の合図で足を鳴らした。

そんな、なんとも微笑ましい(?)光景を静かに見守っていた弁慶が、ふと思い出したような仕種をとる。


「ああ、昴さん。一つ、お尋ねしても良いですか?」
「え?何ですか?」
「先ほど、君がこちらに飛ばされた経緯を話してくださいましたね。」
「はい。」
「その中の話…四神の言う、”八葉との誓い”について、
具体的にどうするのか…ということは知りませんか?」
「あ……、はい…。
あたしもずっと気になってたんですけど、いつやるとか、どうしたらとか…
そういうことは全く話してくれなかったんです。」


確かに。
『誓え』とは言われたものの、一体それがどういった内容なのか。
どうしたら誓ったことになるのか。
……皆目検討が付かないのだ。


「そうですか……」
「…ホントに、どうしたら良いんだろう。
……選手宣誓でもしてみようか。」

「選手宣誓…?昴、それは何かしら?」
「えっと、運動会…じゃなくて。
何かをするときに、正々堂々と挑むことを誓う儀式…かな?ゆーくん。」
「え!?…お、大方あっていると思いますが、さすがにそれは…」
「いやいや、なんでもやってみなきゃ判んないって!と、いうことで。」


……だんだんと話の筋が逸れてきたような気がしないでも無いが。

そんなこと構うか、と言わんばかりに、昴は高らかに腕を挙げる。


「宣誓!
私、天満昴は、四神の守人として、
龍の盾となり、八葉の将となることを、
今、ここに誓います!」





「‥‥‥‥‥‥‥。」
「‥‥‥‥‥‥‥。」
「‥‥‥‥‥‥‥。」




「スイマセンなんでもありません忘れてください!!!」





「‥‥‥‥‥‥ぷっ!!」

「あはははは!!昴、な、ナイスボケ!!」
「望美、違う…。あたし真剣だった……」
「いいのいいの!
昴は天然記念物だから!!」
「な、なにそれ!?」


望美の笑い声を引き金にして。


「ふふふっ、」
「朔!?」
「っふ…、…昴さん。君は可愛い人ですね。」
「弁慶さんまで!!
あたしほんとに真剣だったんだから!ねぇ、ゆーくん!?」
「‥‥‥っすみません‥‥‥‥‥‥。」
「―――っ!みんな酷ー―い!!」


梶原邸から、複数の笑い声と。
…――ひとりの嘆き声が響いた。











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