06-1 「ぅん……、」 京邸の中へ吹く涼風と、 小さな鳥の声に誘われるようにまだ重たい目を開けた。 第六話 …二月の末。 時の流れとは早いもので、 こちらの世界に来てから、もう一ヶ月になる。 やっと暮らしぶりにも慣れてきたところだ。 ひんやりと冷える空気を肺いっぱい吸い込んで、ぶるっと身震いして褥から起き上がる。 …いつもよりニ時間ほど早く目が覚めてしまった。 五時位だろうか? 太陽はまだ顔をひそめている。 「どうしよっかな…」 朔やゆーくんと朝餉の支度をするにも、まだかなり時間がある。 もう一眠りしようかとも考えたけど、目は完全に覚めてしまった。 「…よいしょ。」 仕方ないので、あたしは上着を羽織り、傍らの刀に手を延ばす。 これは以前、弁慶さんに頼んで貸してもらったものだ。 ………数週間前、白虎の言う通りに誓いの儀を交わしたのに、依然として何の変化も現れない。 変わったことといえば、背中にまた模様が増えたことくらい。 「なんだかなぁ、もう。 ……素振りでもしよっ。」 花断ちをするためにはまず、基礎を磨かなくちゃいけない。 彼が断ったのは、早咲きの梅の花びら。 …もう少しすれば、きっとあの神泉苑は、桜色に染まるだろう。 その意味するところは、タイムリミット。 桜の花が全て散ってしまう前に、何としても習得しなくちゃ。 朝餉が済んだら神泉苑に行くとして、と。 カチャリという金属音を立て、あたしは庭先へ降りた。 |