04-2


***





その後。


同行の申し出をすると、さも当然と云わんばかりに門前払いされ。
それでもと食い下がると、連れて行かれた神泉苑での花断ちを同行条件にされてしまった。

日も暮れ始めたので、仕方なしにいったん京邸に引き返してきたところだ。

西日が眩しい縁側に近い部屋の隅に、一人ぽつんと腰を下ろす。


「花断ち、かぁ……。」


散りゆく花びらを刀で両断すると言う、神技掛かった秘剣。

真っ直ぐな太刀筋でそれをやってのけた源氏の大将を思い出す。


「あんなこと、できるかなぁ…」


一体彼はどれ程でそれを習得したのか。
いや、武士の子ならばまだ不可能ではないかもしれない。

けれど、あたしたちは武士でもないし、ましてやこの世界の人間ですらない。
…さらに言うと、女の子。
現役時だったら、良かったんだけど…



あんなにもしっかりと刀を扱えるように 
……もう一度、成れるかどうか…。


でも、戦に出る以上、それくらいは出来なくちゃいけないことなんだ。


…まずは花断ち以前に、刀を奮えるだけの力をつけなくちゃ。


科された課題に、あたしは膝を抱えて溜息をついた。

……そして問題がもうひとつ。


あたしはこちらのほうが、より重大かもしれない。



「武器、どうしよう。」



そう。
あたしにはまだ、武器と呼べるものが無い。
望美やゆーくんはこの世界に来た最初から、手元に使うべき得物があったらしい。
でも、空(?)から降ってきたあたしにはそんなものは無くて。

一応、弁慶さんに頼んではみたけど…。


ああもう。
なんか今日『どうしよう』しかいってないような気がする。

あたしは再び唸りながらひざに頭を埋めた。





…―――――ふんふんふーん…


……?



微かな鼻歌が聞こえてきたのは、それから少ししたときの事。



「誰だろう…?」


聞いたこと無い声。
ということは、もしかして…



あたしはすたっと立ち上がり、声の聞こえるほうへと足早に向かった。

……もしかしたら。
以前話に聞いた、朔の“お兄さん”かもしれない!


その、“お兄さんかもしれない声”――もとい、なんとも楽しそうな鼻歌は、
洗濯物がはたはたとはためいている中庭から聞こえる。


「あっ…!」


その、真っ白になった洗濯物の隙間から、
松葉色が、動くのが見えた。
…どうやら干してあった衣を取り込んでいるみたい。(いけない!すっかり忘れてた…!)


「あのっ!」


挨拶がてら、作業の代わりを申し出ようと、慌てて庭に降りようとしたあたし。
丁度その拍子に、今まで衣で隠れて見えなった人物の姿を、初めて見………


「あれぇ〜、見ない顔だね、どうしたの?
源氏に新しく雇われた子かな〜?」



‥‥‥。



「へ‥‥‥‥‥‥」
「へ?」

「へそっっ!!?」





04:遭遇。地のふたり。



(へ、へそ…?)
(あぁ違うんです!これは挨拶で…!!)
(挨拶、なのかい?)
(…はい、こんにちはって意味です。……空島で。)




09/5/12
re:11/6/6



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