黒曜の色

「珍しいな」
「ん、なに?」

 いつもならもうとっくに外されている私の下着が、何故か今日はまだ私の胸を覆っていた。外すつもりでいたであろう彼は、不思議そうな表情で私のそれを凝視している。見られるのもそれはそれで、恥ずかしいのだけれど。

「あんたが、その、黒はイメージになかったなって」
「……色の話をしてる?」
「ああ」

 なんのことかと思えば、下着の色のことだったらしい。確かに私はいつも淡い色のものを選びがちだから、見慣れないという話ならそうなのだろう。
 私は右腕を伸ばし、そのまま彼の側頭部に手を添えて髪を撫で付ける。柔らかい、黒曜の色。

「貴方の色だな、って思って」

 そう告げれば、彼は一瞬だけ目を見開き溜息を零した。驚いた顔がいつもよりも幼なげでなんだか可愛い。

「またそうやって、男を煽るんじゃない」
「え、そんなつもりないのに」
「あんたいつも無自覚だな」

 彼からの咎めるような言葉に恥ずかしくなってしまう。本当に、そんなつもりなんてないのにな。

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