私とあなたの日

 その後、お昼になると旅人たちに連れ出され、私たちは特別許可食堂で豪華な食事を囲むことになった。どうやらクストさんとラヴェリューヌさんが以前から計画して用意していたものらしい。それはいいとして、『みんなの公爵様』を祝う催しだったのにリオセスリがわざわざ私の誕生日を今日にしたことまで話してしまったから、そのまま私までみんなから祝われてしまう羽目になってしまった。とても恥ずかしい思いをしたけれど、来年もこうして楽しい一日を過ごせたら素敵だな。
 
 仕事を奪っていったリオセスリのせいで午後の予定が丸ごと空いてしまった私は、特別許可食堂からそのまま連行されて今は彼の私室にいる。というのも彼が午後は私とゆっくり過ごしたいなんて言い出したからで、私の書類を掻っ攫っていったのもそれが狙いだったらしい。せっかくの誕生日なのにどうして部屋に引き篭もっちゃうんだか。

「俺は別にいつも通りでいいのさ」
「水の上におでかけだって出来たのに?」
「なんだ、デートでもしたかったのか?それは別の日に予定を立てて行こうか」

 彼の手が頬に伸びてくる。私は今、彼の膝の上だ。こうして過度なスキンシップをすることにはもう慣れてきたけれど、この人はいつもこんなふうに私を構い倒していて、飽きたりしないんだろうか。
 ふにふにと親指で頬を撫でられる。少しくすぐったいな。こうされる時は、大抵この後に口付けが降ってくることを私は覚えさせられていた。今日はせっかくだし、私の方からしてあげようかしら。
 首に腕を回して引き寄せて、そっと唇を奪えば彼はおとなしく受けてくれた。少し長めのキスをするうちに、私はそのままソファに沈められていく。

「ナマエ」
「なあに?」
「好きだ」
「んん、急にそういうこという……」
「言いたくなったんだ、仕方ないだろ」
「ふふ、私も好きよ」

 もう一度、次は彼が覆い被さってきて先ほどよりも深い口付けが降ってきた。多分このままするんだろうな、という甘ったるい空気を感じたところで、私はふと思い出す。用意してたプレゼント、渡してないどころか持ってきてないわね。

「ちょっと待って、私一度部屋に戻るわね」
「おいおいそれはないだろ」
「でもあなたへのプレゼント持ってきてないのよ」
「あとでいい、先にあんたが欲しい」
「そんなこと言わないで!?」

 せっかく用意したのに後回しにされちゃうの!? でも早いうちにこの雰囲気に持ち込んでしまったのは私のせいでもあるし、彼は今プレゼントより私をどうにかしたいのだろう。自分で言うのもなんだけど、彼は私のことを欲しがりすぎだと思うの。

「このタイミングで止めるのは駄目だろ」
「ご、こめん」
「あとでちゃんと受け取るから、先にあんたを抱かせてくれ」
「……はあい」

 ぎらぎらとした瞳に射抜かれて、私は潔く降参する。こうなったリオセスリは簡単に止められた試しがない。狭いソファからすぐにベッドに連れて行かれ、それからしばらくは彼のお望み通りの時間を過ごす。こうなったら思う存分好きにしてほしい、あなたのための日なんだし。
 
 そんなこんなで、私は結局その日にプレゼントを渡せずに彼の腕の中で朝を迎える羽目になった。

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