一羽は試合の準備をする染岡、風丸、壁山のもとに歩み寄った。

「怪我は大丈夫なの」
「どうってことねーよ」
「テーピングもしたし問題ないッス!」
「それに、俺たちが出ないと11人揃わないだろ」
「そっか。無理はしないでね」

そう言うと、3人ともぽかんと口を開けて固まった。こいつら、私におかしな印象を持ってないか。

「私は君たちの思ってるキャラとは違うと思うよ」
「はあ?」

染岡が間の抜けた声を出す。どこがだ、とさらに難しい顔をされた。なんなんだもう。

おーい何してんだよー!円堂が叫ぶのを聞いて3人は慌ててグラウンドに走った。



「地球にはこんな言葉がある。『井の中の蛙大海を知らず』……己の無力を思い知るがいい」

レーゼが話すのを聞いてから、円堂はぐるりと全員の顔を見渡した。

「よーし行くぞみんな!今度こそオレたちのサッカー、見せてやろうぜ!」
おお!とみんな勢いある返事をする。

「さあ、一度負けた相手にどんな試合をするのか……じっくり見せてもらうわよ」

瞳子の言葉に頷いた一羽はグラウンドをすっと見据えた。



やっぱり、雷門イレブンはジェミニに追い付けていなかった。彼らのノーマルシュートでさえ止められないようだ。

「な、なんて速いシュートだ……!」

(今のシュートが見えないなら、まだジェミニには勝てないな)
「この試合捨てましょう」

瞳子に告げると、「シュートを決めるまで待つわ」と返された。何か狙いがあるのだろう。一羽はわかりましたと返事をしてまたグラウンドを眺めた。


ゴール手前で豪炎寺にボールが渡った。豪炎寺はボールを高く上げ、自身も高くジャンプする。そして必殺技、ファイアートルネードを打った。

(ん、)

すこし違和感があった。するとボールは軌道を上げてゴールの上をかすめてしまった。あの豪炎寺くんがシュートを外すなんて。隣で秋がつぶやいた。

「くっ……!」
「どんまいどんまい!次は決めて行こうぜ!」
「ああ……すまない」

円堂の言葉に豪炎寺は軽く手を挙げた。


「一羽ちゃん、今のシュート、どうして決まらなかったかわかる?」
「ボールを蹴るのが少し遅かったです。それから視線もボールじゃなくて、別のところを見ていた気がします。原因はたぶんそれかと」
「別のところ……」

瞳子の問いかけに答える一羽。瞳子は辺りを軽く見回してから、豪炎寺を見た。豪炎寺の表情はいつもと違うように見えた。

ファイアートルネードが再びゴール横にそれたところで、前半が終わった。
瞳子が疲れきって肩を大きく揺らしている雷門イレブンに近付く。

「今のあなたたちじゃ彼らのスピードにはついていけない。それはもうわかったでしょう」
「……じゃあどうしろって言うんですか!」
「ここからはディフェンダーとフォワード、全員入れ替わりなさい」

ええええ、とほぼ全員が叫ぶ。

「そんな事をしたら、すぐに相手に抜かれてしまいます!」
「だったら、抜かれないようにすることね」
「でも……!」
「後半始まるわよ」

一之瀬の言葉を遮った瞳子。皆が怪訝な顔で彼女を見ていた。



慣れないポジションでまともに試合ができるはずもなく、次々とゴールが決められていく。

「まったく、つまらん試合だ」
レーゼがゴール前に立つ。

「お遊びはここまでだ。我らもそろそろ本気を出すとしよう」
「なんだって……今までのはまだ本気じゃなかったっていうのか!」

「くらえ…アストロブレイク!!」

紫のオーラをまとったボールが放たれた。円堂は体をひねり何かをしている。

「マジン・ザ・ハン……うわあああっ!!」

ボールは円堂とともにゴールに入った。倒れた円堂を見下ろしたレーゼは「やはり時間の無駄だったか」と言い、光に包まれ消えてしまった。
みんなが円堂のもとに駆け寄る。

「円堂!!」
「キャラバンに運ぼう!」


瞳子がふと目をやった先で、豪炎寺がジェミニのいた場所を見つめていた。





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