総理大臣が誘拐されたとかなんとかで、急遽奈良に向かうことになった。雷門のメンバーは10人しかいないままだ。



奈良に到着した雷門イレブンは、総理大臣についての手掛かりを探すために聞き込みをはじめた。一斉に散っていく青と黄色のユニフォームを眺めて、ふと隣を見ると、ドレッドヘアにゴーグル、青マントの少年だけがそこに佇んでいた。

「鬼道は行かないの」
「ああ」

一羽はふうん、と適当に相づちをして前に向き直った。円堂となんとか岡がおばさんに質問しているのが見える。「おい」鬼道に話しかけられた。

「なに」
「おまえ、どこの中学校から来た」
「……中学には行ってない」

ぴくり、鬼道の眉が少し動いた。

「監督補佐とはなんだ」
「そのままの意味。戦術を考えたり相手の弱点を探したり、あとは君たちの技能向上のためのアドバイスをするつもり」

鬼道からはなんの返事もない。ただ腕を組み何かを考えているようだった。ゴーグルのせいで表情は読めないが、探りを入れている風なのはわかった。

「サッカー、できるのか」

無機質なゴーグルが私をまっすぐ見つめる。ぴくり、今度は私の眉が動いた。

「一応」
「……そうか」


鬼道ー、水原ー、と円堂がよく通る声で私たちを呼んだ。

「奈良シカ公園が怪しいんだ!行ってみようぜ!」

入口に総理大臣のSPっていう人がいて、シカせんべいがなんたらかんたら、と話す円堂につられて鬼道が歩き出した。ふわりとマントが風に揺れた。
選手データに書いてあった通り、鬼道有人、こいつはなかなか頭が切れるようだ。

(隙は、見せられないな)



奈良シカ公園のオブジェは首を無くして無惨な姿になっていた。皆が唖然とする中、風丸があるものを見つけたと騒いでいる。

「……黒いサッカーボール!間違いない、エイリアのヤツらのものだ」

エイリア学園(レーゼが即興でつけたらしい)、ジェミニストーム愛用の黒と紫のサッカーボールがオブジェの陰に転がっていた。円堂がボールを持ち上げようとするがボールは動かない。

「ぐぎぎ……重い!」
「あいつら、こんなボールを軽々と蹴ってたのか……!」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ彼らの背後から、

「そこまでだっ!」

声が聞こえた。一羽はどきりとしたけれど、それは彼女だけでなく雷門の全員に向けて言ったようだった。
一斉に振り返ると、そこではスーツを着た大人がずらりと並んでいた。

「みつけたよ、宇宙人の手先め!!」
「宇宙人って……俺たちが?」
「そうだよ!」

スーツ軍団の真ん中に立つ赤い髪の毛の少女が言った。「そのサッカーボールが動かぬ証拠だ!」びしっ、と少女は円堂の手にあるボールを指差す。

「あんたたちはまだテレビでも発表してない宇宙人のことを知ってた!それに、犯人が証拠を隠しに現場に戻るってのは捜査の基本なんだ」
「この黒いサッカーボールは今そこで拾っただけで……」
「とぼけるつもりか?宇宙人め」
「待てよ、オレたちは宇宙人じゃない!」
「いーや、宇宙人だ!」
「宇宙人じゃないったら宇宙人じゃない!!」
「宇宙人だったら宇宙人だ!!」

円堂と少女がしばらく睨みあったあと、少女は腕組みをしてふん、と軽く威張ってみせた。

「そんなにサッカーが好きなら、勝負をするっていうのはどうだ?」
「勝負?」
「そう、あたしたちSPフィクサーズとな!」

SPフィクサーズ?となんとか岡が復唱すると、後ろからマネージャーの音無春奈が説明をはじめた。どうやらサッカー好きの総理大臣が作ったチームらしい。


「サッカーをしてれば嘘をついてるかどうかわかるんだ」
「それならこっちだって望むところだ!」
円堂は目を輝かせて言った。



見せてもらおうかな、雷門イレブンのサッカーを。





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