『お願いって、何かしら』
「研究所を逃げ出してきました」
『!』
「お父様のやり方に納得がいかなかったんです。瞳子さんもそうでしょう」
『……ええ』
「瞳子さんに協力したい。私に何かできることはありませんか」
『今、どこにいるの』
「樹海の川のそばです」
『向かうわ』

電話が切れた。





しばらくして一台の車がやってきた。一羽は運転席に乗る女性、瞳子に促されて助手席へと乗り込む。

「瞳子さん。さっきの話ですけど」
「本当にそう考えているの?」
「はい」

じっと瞳子の横顔を見つめた。瞳子は真っ直ぐ前を見ている。

「……お父さんに対抗するための、最強のチームを作ろうと考えているの」
「最強のチーム」
「その為に、雷門中に行くわ」

雷門中、確かフットボールフロンティアで優勝した中学校だ。

「私、なんでもやります」

少しの沈黙の後、それじゃあ、と瞳子が口を開いた。



その日、一羽と瞳子は東京にいた。一羽は藍色のツナギを着ている。雷門中に向かって歩く瞳子の後ろをついて歩く。都会の景色に興味はないので、瞳子に貰った雷門中の選手のデータを眺めていた。こんなにたくさんの選手の名前覚えられるかな、そんな事を考えていると突然瞳子が立ち止まり額をその背中にぶつけた。

「着いたわよ」

瞳子は校門をくぐっていった。額を押さえながらその後についていく。

「……情けない。監督がいないと何もできないお子様の集まりなの?」

さっそく辛辣な言葉を発しているみたいだ。基本的に厳しいのが瞳子さんだから仕方ないか。

「今日からあなたたちの監督をつとめる、吉良瞳子よ」

瞳子が喋っているのを聞きながら、一羽はゆっくりと瞳子の隣に並ぶ。グラウンドにはたくさんの人がいて、ほぼ全員の視線が自分にに集まるのを感じた。

「……キミは?」

オレンジのバンダナを巻いた少年が聞いてきた。

「監督補佐、水原一羽」
「監督補佐か!よろしくな!」
「よろしく」

ユニフォームを見たところキーパーのようだ。そして左腕にキャプテンマーク、

(こいつが、円堂守)

円堂守はにかっと笑ってみせたけれど、一羽はそれを無視して雷門のメンバーを見渡した。感じ悪ぃな、とピンク坊主のなんとか岡(名前忘れた)が言ってるのも無視だ。



一羽たちが来る前に雷門中はエイリア学園の襲撃を受けたらしく、校舎はボロボロになっている。しかもレーゼのチーム、ジェミニストームにこてんぱんにやられて数人病院送りになったそうで、


(ジェミニストームなんて、セカンドランクだぞ)

本当に最強のチームなんて作れるのかな、と先行きが不安であった。





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