白恋中グラウンド。うっすら雪の積もったフィールドに、雷門イレブンと白恋イレブンが並んだ。

瞳子からの指示は特にない。瞳子は吹雪の実力を見るだけだから、と話した。雷門イレブンと白恋イレブンは互いに礼をして各自のポジションについた。

「吹雪さんってすごいストライカーって感じが全くしませんよね」
「そうね……豪炎寺くんに比べたら迫力がないかも」

ひそひそと秋と春奈が話している。白い長袖、白恋中のユニフォームを着た吹雪はゴールの少し前に立っている。そのポジションはフォワードではなく、

「……吹雪がディフェンスにいる?あいつはフォワードじゃないのか?」
「ふざけてんのかよ!」

円堂の言葉に、染岡がまた地面を踏み鳴らす。

ホイッスルが鳴った。
最初にボールを取ったのは染岡。まっすぐ相手陣に切り込んでいく染岡の前に白恋が数人立ちはだかる。

「どけ!!」

それを蹴散らして直進する。どうやら白恋イレブンの実力はあまり高くないらしいな。やがて染岡と吹雪が対峙した。

「おらおらァ!!」
「そういう力強いプレイ、嫌いじゃないよ」

吹雪が動いた。

「アイスグランド!」

グラウンドにスパイクを振り下ろした瞬間、染岡が凍りつく。ボールは吹雪が奪っていた。奪ったボールを雪笠の子にパスするが、しかしそれはすぐに染岡に取られていた。

「轟け!ドラゴンクラッシュ!」

染岡のシュートがゴールへと向かう。そこにすっと吹雪が現れ、くるりと回転した。その勢いでシュートに向かって蹴りを入れると、ボールは吹雪の足元にぼたりと落ちた。

「なっ…くそ!」

すかさず吹雪の足元にスライディングをしようとする、と。

マフラーを軽く握った吹雪、その周囲から雪が激しく舞いだした。染岡は吹き飛ばされてしまう。
にやり、吹雪が笑うのが見えた。

(…ん、)

一羽は違和感に眉を寄せた。
それを感じ取ったのは一羽だけではないようで、雷門イレブンも怪訝な顔をしている。
白恋側ではみんな嬉しそうに「吹雪くん!」と名前を呼ぶ。

「まかせとけ!いつもみたいに点取ってやるからよ!」

明らかに何かが違う、そう思った時にはすでに吹雪は雷門のディフェンスを突破していた。「風丸くんより早い!」夏未が言う。

「吹き荒れろ!エターナルブリザード!」

ボールが氷の塊になる。蹴り込まれたそれを、円堂がゴッドハンドで止めようとするが、ゴッドハンドは砕け、シュートが決まった。
唖然とする円堂の前で、吹雪はまたにやりと笑う。

「いいか、よく聞け。オレがエースストライカー、吹雪士郎だ!」


「……オレは認めねぇ!!」

染岡が叫び、ドリブルをしようとした時、瞳子の「そこまでよ!」という声が響いた。

「実力は十分見られたわ。合格よ!」

わあっ、と皆が一気に湧く中で、
「豪炎寺の代わりはいねえ、いるわけねえんだ…!」染岡の大きな独り言。
「ごーえんじぃ?誰だ、そいつ」
「……クソがっ!」

染岡がドリブルをはじめた。それを見た吹雪は「まだやるのか?オレはいいぜ」と染岡を追いかける。すぐに追い付き、軽く競り合いになって、吹雪がボールを奪った。

「その程度か!甘いな!」

またさっきのシュートの構え。氷の塊が再びゴールを目指す。その前に塔子と壁山が立ちはだかった。
「ザ・タワー!」「ザ・ウォール!」2人は必殺技を出した。
まず塔があっけなく崩れ、壁にボールがぶつかる。ぐっと力む壁山。

「お前らに止められるようなエターナルブリザードじゃねえ!!」

吹雪が叫ぶと、壁は砕け散る。その先で円堂が気を溜めていた。

「止めてみせる!マジン・ザ・ハンド!!」

マジン、がボールの動きを止める。そのまま弾かれて吹雪の元に戻ってきた。

「ちっ…もう一回、」

シュートを打とうと腰を屈めた吹雪、そこで瞳子が一歩進んで手を叩いた。パンパンと乾いた音。

「はいはい、そこまで!」

円堂たちが吹雪に駆け寄る。会話をする吹雪はふにゃりと笑う。

「吹雪!オレ、お前とサッカーしたい!」
「ボクもだよ。キミたちとなら楽しいサッカーができそう」

瞳子が静かに歩み寄る。

「吹雪くん、正式に雷門に入ってもらえるわね?」
「いいですよ」
「やった!よろしくな、吹雪!」
「うん、キャプテン!」

吹雪は顔を上げてよろしくね、と笑った。おう!雷門イレブンが返事をする中で、染岡だけが口を開かなかった。




「──た、大変だ!!」

校舎のほうから少年が駆けてきた。白恋中の生徒のようだけど、なんだか慌てている。そしてノートパソコンを抱えている。どうしたの、と吹雪が訊ねると、少年は早口で何か(早口すぎて聞き取れない)を話しながらパソコンを開いた。

『この映像が届いた選ばれしサッカー部の諸君。わがエイリア学園とのサッカー勝負に応じよ』

赤い背景、緑の超次元ヘアー。パソコンに映し出されたのはレーゼだった。

『断ることはできない。負ければ破壊が待っている。助かる道は勝利のみ』

ぶちん、と画面は黒色になる。「さっき、この映像が送られてきたんだ!」と少年は言う。

「北海道にまでエイリア学園が来ているなんて……」呟く瞳子に、マネージャー達が不安げに顔を見合わせた。


「大丈夫だ!!」皆の視線が声の主、円堂に集まる。円堂は笑っていた。

「今度こそオレたちがエイリア学園を倒すんだ!」

ぐっと拳を握り、軽くガッツポーズをした円堂に、周りもうなずく。

「でも、今の君たちじゃエイリアには勝てない」
「そうね。明日から特訓よ」

一羽と瞳子の言葉に雷門イレブンははい!と返事をした。その顔はさっきとは違って、自信、みたいな、そんなものが見えた。

「キャプテン、ボクいい特訓知ってるんだけど……」
「本当か!?教えてくれ!」

明日にしましょう、円堂くんはきっと話を聞いたらすぐにでも練習したくなっちゃうもの。秋の言葉に笑う吹雪は、なんだかすごく楽しそうだった。





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