キャラバンの進む方向に、ぼんやりと建物が見えてきた。あれが白恋中のようだ。

白恋中の校門前に降りると、外の寒さに体がぶるぶるっと震えた。秋に渡されたダッフルコートを羽織る。ツナギがかさばってもさもさしている。


あのう、と声がかけられて振り向く一羽。そこには、雪傘をかぶった少女がもじもじしながら立っていた。おそらく白恋の子だろう。そして見覚えのある芥子色のジャージを着ていた。

「ら、雷門中の人……ですよね」
「ええまあ」
「……本物の雷門だ……!」

少女は後ろを向き手招きを始めた。すると木の陰からさらにたくさん人がやってきて、雷門イレブンはすっかり囲まれてしまった。

「な、なあ!吹雪士郎ってやつ知らないか?」

円堂の質問に、白恋はみんな顔を見合わせた。

「吹雪くん?そういえば今日は見てないね」
「吹雪くんならスキーしてるズラよ」
「違うよ、スケートだよ!」
「ボブスレーじゃない?」
「……すごい奴だな」

風丸が呟いた時、背後から足音が聴こえた。

「あっ、吹雪くん!お客さんだよ!」
「お客……?あれ、キミたちは、」

見ると、それはさっき遭難していた少年だった。





「そうだったんだ、キミたちがあの有名な雷門中……」
「ああ。まさかお前が『熊殺しの吹雪』だったなんてな!」

とてもそうは見えないけどね。夏未が(少し嫌みっぽく)言うと、吹雪はふにゃりと笑って頭を掻いた。

「あはは……そう呼ばれるから、大抵の人はボクを大男だと思っちゃうみたいなんだよね」

その流れをずっと傍観していた瞳子さんがゆっくり動いた。

「吹雪士郎くん。私は吉良瞳子、雷門イレブンの監督です。少し話があるんだけど、いいかしら」
「はい、いいですよ」

隣を見ると、染岡が腕を組んで吹雪を睨んでいる。

「あんなナヨナヨした奴が、豪炎寺の代わりだと……?」

最初から悪い目付きをさらに悪くして、独り言のように小さく言った。



きゃあきゃあと楽しげな声が聴こえる。みんなで雪合戦をしているようだった。一方、吹雪と瞳子さん、円堂、そして一羽は、少し離れた場所にあるカマクラの中にいた。瞳子さんがこれまでの経緯を話す。

「──という訳で、私たちは地上最強チームを目指しているの」
「そのためには吹雪、お前の力が必要なんだ!オレたちと一緒に戦ってくれないか?」
「……うん、いいよ」
「本当か!?」

円堂はこくりと頷く吹雪の手を笑顔で握った。瞳子はそれを見ながら、顎に手を当て何かを考えているようだ。

「まずは、吹雪くんがどのくらいの能力を持っているか確認したいわ」
「それなら練習試合とかすればいいんじゃないですかね」
「練習試合!水原、それいいな!」

よーし、試合だ!円堂は叫んでからカマクラを飛び出した。雪合戦をしている中に知らせに行き、雪玉を当てられているのが見えた。



「ねえ、」

とんとん、肩を叩かれて振り向くと、吹雪が私を軽く見上げていた。

「水原さん……っていうの?」
「うん」
「そっか。よろしくね」

ふにゃりと微笑む少年に、ストライカーの雰囲気はあまり感じられなかった。





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