ジェミニに惨敗した雷門イレブンは、奈良シカ公園に戻ってきた。

円堂はキャラバンの中で手当てを受けている。それを待つ雷門イレブンはキャラバンの前に集まっていた。
染岡がダンッ、と足を地面に叩きつける。

「くそっ……なんだよ、あの監督の作戦は!あれじゃ、どうぞ点を取ってくださいって言ってるようなもんだろ!」
「SPフィクサーズのときはスゴい監督だって思ったのにッス……」
「理事長に連絡して監督を変えてもらおうぜ!」
「待て、染岡」

鬼道が染岡の前に手をやって制止するような振りをみせた。

「なんだよ鬼道……」
「周りをよく見てみろ。今回の試合、怪我人が1人もいない」

他のみんなは確かにそうだ、と驚いている。気付いていたのは鬼道だけだったみたいだ。

「もしあのまま、俺たちが戦い続けていたらどうなっていたと思う?」
「……俺たちも、半田やマックスみたいに病院送りに……!」

風丸の言葉に、壁山と栗松が抱き合って縮こまっている。それを見た染岡が首をぶんぶんと横に振った。

「けど、それでよかったのかよ!どんな時でも全力で戦う、それがオレたちのサッカーだろ!」
「それは違うぞ、染岡!」

キャラバンから円堂が降りてきた。もう平気だぜ、と肩を回している。

「監督は、ヤツらを使ってオレを特訓してくれたんだ」
「特訓?」
「シュートは実際に受けてみたほうがいい練習になるしな。おかげで最後の最後、ちょっとだけヤツらのシュートが見えたんだ」
「本当か、円堂!」
「ああ!それに……必殺技も見ることができた!今でも手がビリビリしてら」

手を開いたり閉じたりしている円堂の目は輝いていた。けれど一羽にはその理由が理解できなかった。どうして負けたのにそんなに嬉しそうなんだろう。

「でも、思ったんだ。これなら取れないことない!もっと特訓して力をつければ必ず取れる!ってさ」

どこからその自信が来るんだろう。


「今回の試合は捨てて、次につなげようとした。そういう事だろう?水原」
「うん。それから円堂のキーパーの特訓もね」

土門が「さすが監督補佐は違うな」とかなんとか言ってきた。ありがとう、と返事をしたところで、キャラバンの裏から瞳子が出てきた。瞳子は豪炎寺を見つめて言った。

「豪炎寺くん。あなたにはチームを離れてもらいます」

「い……今、なんて言ったでやんすか?離れろ、とかなんとか……」
「どういうこと……?」
「もしかして、今日の試合でミスったから……とか?」

ざわざわとする中で土門が発した言葉に反応した円堂が、瞳子に「そうなんですか!?」と詰め寄る。

「ちゃんと説明してください!」
「私の使命は地上最強のチームを作ること。そのチームに豪炎寺くんは必要ない。それだけです」
「それじゃ説明に……!」

円堂が言い終わらないうちに、豪炎寺がゆらりと歩いて行ってしまった。それに気付いた円堂が豪炎寺を追いかけて走る。
その様子を目で追った後、瞳子は何も言わずにキャラバンの中に入っていった。


「……なんでなんだよ!なんで、豪炎寺が!!」

染岡がまた叫んだ。周りのみんなはうつむいて何も言わない。

「悲しんだって豪炎寺は帰ってこないよ」
「てめえ……!!」

一羽が突き放すように言う。それを聞いた染岡が一羽の前に歩み出て、彼女の肩を突き飛ばした。軽くよろめいた一羽は染岡を強く睨み付ける。

「ふざけんなよ!お前も、監督も……!!」
「本当の事を言っただけじゃない。冷静になりなよ」
「……っ!」

染岡は私の横を走っていった。どこへ行くんだ、鬼道の問いかけに「豪炎寺を追うんだよ!」と叫んだ。それを追ってみんな私の横を通りすぎていく。
最後に、秋が一羽の肩に軽く手を添えて言った。

「みんな、豪炎寺くんは帰ってくるって信じてるんだよ」



信じてる、か。

「……私にはまだわからないよ」

ひとり残された一羽は目をゆっくりと伏せた。





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