用意された服から黒のワンピースを適当に選んだ。ティアが着ていた、裾が破れて薄汚れたドレスは捨てるらしい。けれど、深紅のケープはなんとなく手放すことができないような気がして、ワンピースの上に羽織った。なぜだか濡れていることもなかった。



「──で?」

ティアが着替えて、さっき話していたという『パンドラ』という組織の説明や自己紹介なんかをに一通りし終えると、ドス黒いオーラを放ってソファにふんぞり返っていた少女、アリスが口を開いた。

「おまえらは私達をどうするつもりなんだ」

あ゙ん?と机に蹴りを入れる少女、アリス。その横でなぜか少年、オズが怯えている。

「今の私ではおまえらに敵わない、逆に力を解放され続ければオズの体がもたない」

つまり、アリスとオズの命は目の前の彼らに握られている、ってことになるらしい。くくく、とアリスが笑う。

「さぁ……望みを言ってみるがいい!」
「そうですかあ?では、ぶっちゃけて申し上げますとォ〜」

さっきの男、ブレイクがおどけながら言う。びしっ、と3人を指差した。

「お三方には……私の部下としてパンドラで働いて頂きタイ」
「??」
「何だと……!?」
「アリス、抑えて!」

ブレイクを殴り飛ばそうと立ち上がるアリスをティアが慌てて止めた。アリスが不機嫌丸出しで座る。ぼすん、とソファが音を立てた。

「我々はネ、今とある任務でバスカヴィルの民を追っているんですヨー」
「バスカヴィル?」
「ああー、君をアヴィスへ堕とした人達のことですネ☆」

オズは驚いた表情、さらにティアもその言葉に反応した。
バスカヴィル。どこかで聞いたことがあるような。

「私達が君を連れ出そうとしたのはネェ……オズ君、君がバスカヴィルにとって一体なんなのかを知りたかったからなんだ。もしまた彼らが現れても我々といれば安心ですヨー?それに……家に戻ってもまたご家族を巻き込みかねないからネェ?」

ブレイクがそう言うと、オズは抱えていたクッションをさらに強く抱き締めた。

「それとアリス君、これは勘ですが……さっきの道の出現は君の記憶が原因ではないのかい?もし道が繋がる所に君の記憶があるのなら、パンドラの情報がきっと役に立ちますヨ?」

アリスはいぶかしげにブレイクを見つめた。

「あとは、ティア君。君とアリス君は何か関わりがありそうなんですよ。チェインであるということだけでなく、です」

えっ、とオズが声を上げた。

「ティアさん……チェインなの?」
「ええ、まあ」

周りがざわざわし始める。っていうか、
(この男、どうしてわたしがチェインだとわかったんだろう)

「アリス君の記憶と君の記憶が同じ場所にあった、そして記憶が見えた時に君が現れた……それは何か特別なことだと思うんデスガ」

ブレイクの目が最初のきつい感じになる。思わず目を逸らすティア。

「──君はなぜアヴィスから出てきたんだい?」
「なぜ、って」
「アヴィスから出られた今、君はどうしたい?」

ブレイクの刺すような視線に、動きが止まった。その赤眼に射抜かれたように、思考も停止する。

「……わからない」
「まあ、君がチェインである以上、野放しにしておくわけにはいきませんからね。暇なら記憶探しでもどうですカ?アリス君と記憶を探せば、君の記憶も見付かるかもしれませんヨ〜?」

ブレイクはさっきのおどけた笑みに戻って、ティアの前でくるりと一回転してみせた。

「……おまえらがバスカヴィルを追う理由はなんだ?」

話が終わったのを見計らってアリスが訊く。

「私達はかれらと同じものを欲しているのです」

大人びた少女、シャロンが歩み出る。

「今はただ、そうとだけ…」
「…………」
「……ふう」
「…………」

オズはシャロンに見とれ、
ティアはため息をつき、
アリスは答えをはぐらかされて不機嫌そうになる。

「いやあ素敵デスネェ。お互いを利用──……もとい協力し合える関係って♪」

ブレイクが笑いながら言う。すると、窓から日が差してきた。もう夜明けですか、とブレイクが呟くと、オズとアリスがバルコニーに向かって走り出した。窓からの景色を見ながら何か話しているようだ。

「オレは知りたい……あいつらの言うオレの罪ってのが何なのかを──!」

オズが声を張って言った。






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